地獄への道は善意で舗装されている。

□苦難の連続、涙の予選。
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スタートゲート狭すぎだろ!と誰もが口にした。そんな中飛び出したのは我がA組の知的なエース轟焦凍!彼はゲートでモタモタしている平凡生徒の足元を凍らせトップに躍り出た!さすが轟くん……エリートは違う……。

だけど水に戻せば意味は無い。その先の氷も水へ再生。びちゃびちゃするけど仕方ない。


A組の生徒はかなり氷を切り抜けていった。何度も目にしているし、おかしくはない。


「み、峰田くん横!」
「なんだ水無月……へぶっ!?」
「あー……遅かった」
「入試の仮想敵!?」


懐かしき0ポイントのゴツイ仮想敵。ただただ逃げていた。大きくて怖かったし。

今回はそれをどうにかして突破しろということか。轟くんは凍らせて、その隙間を通っていった。他のみんなも便乗しようとしたけれど、すぐにぐしゃりと潰れた仮想敵。

切島くんとB組の男の子が巻き込まれてしまったが、二人とも硬化系個性だったので事なきを得た。良かった。


「わっすごい爆豪くん」


走ってなんとか切り抜けようとする私達とは違い、爆破を使って上から回った。


さすがにあんなことはできないな。


みんなでどうにかくぐり抜けた。その先は綱渡りゾーン。細いロープだけが頼り。


「元に戻せばいいよねっ」


道を戻すときは一瞬だし、足場作りに時間をかけてでも安全に進む方がいいだろうと思い、近くの地面を床状にしてきちんと歩ける道を作った。変形の練習をしなきゃここはクリア出来なかったかもしれない。っていうか絶対無理だった。


「ごめんなさい、直します!」


ちょうどいいと言わんばかりに私の後を続いていた人達へ向けて。先程の轟くんよろしく、数名を脱落させてしまう。申し訳ない。


最後の関門は地雷地獄。実況のプレゼント・マイク曰く、威力はそれほどでもないけど、何かと派手で失禁必須……だそうだ。汚い話はしないでほしい。プレゼント・マイクの株が下がった。


よく見れば地雷の位置が分かる。前を行く人はたくさんいるし、それに続いていけば何とかできそう。


「あっ」


無駄に派手な音をたて、私の足元で爆発する地雷。軽く体が飛び上がり転びそうになった。足をつく先にも地雷!連鎖的な爆発が起こるのは困る。咄嗟に地雷を覆うように地面を変形させ、何とかなった。

もちろん直すのも忘れず。


「疲れた……っ……」
「水無月、ほら頑張れ!」

耳郎ちゃん優しい。


地雷を全て覆えば何の問題もない、と思ったが、もはやそんなことをする体力すらなかった。2週間でだいぶ完成させたとはいえ、本来の用途ではない使い方だから、かなり疲れてしまう。

その上こんなに走って、やばい、これはやばいぞ。上位に入れないかも。

その間にもどんどん追い抜かされていた。ここまできたのに敗退なんて!まさに涙を飲む事態だ。

せめて第2種目までは……!


不意に、透明な塊が飛んできた。思わず掴んでしまったそれは、氷のようだった。轟くんが残したものが後続に踏み荒らされ、破片が飛んできたようだ。使える!


私はその氷を握り、個性を発動した。再生速度を調整しようと思ったのだが、これが難しくてなかなか上手くいかない。そもそも物を直すなら可能な限り早い方がいいんだからと、調整の練習なんてあまりしたことのないせいだ。

本当は、前進は直す力に任せ、私は地雷のないところを歩くようにしようと考えていた。だけど今の私は、スピードのコントロール不可で人間が走れる速度じゃない。これなら地雷を踏んで進んでも被害を受けないで済む。むしろ足がもつれないように頑張る方が大切だ。

再生速度に合わせて走るより、ジャンプで進んだ方が楽そうだ、と気付いた頃には地雷エリアを突破していた。


道なりに進んでしばらく。いよいよゴールが見えてきた。結構な人数がゴールしていて、やばい、不安しかない、と心から思う。


「ひぃ、疲れたぁ」
「おつかれ、水無月君」
「飯田くんもね……」


中学のマラソン大会でもこんなに疲れなかった。いや、あれは割と歩いていたからか。今回は4kmをほぼ走ったわけで、お遊びマラソンとは比べ物にならない。


「帰りたい……」
「何を言っているんだ!本番はここからだぞ!」
「勝ち進んでたらね!」


予選突破出来ていなかったら、私は観客席から飯田くんを応援すると共に、個性強化の練習をしようと思った。



「みんな終わったわね!それじゃあ結果発表よ!」


画面に映し出された42名の生徒。それが予選通過のメンバーだ。私の名前?それがですね、驚かないでくださいね。


「予選通過ぁ〜っ!」
「やったね咲涼ちゃん!」


見事、42位以内に入ることができた!泣きそうだ。


「まだ早いよ!ねっ、次もあるから!」
「うん……!」








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