地獄への道は善意で舗装されている。
□騎馬じゃなくても騎馬戦です。
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第2種目は騎馬戦。飯田くんは、少なくともお茶子ちゃんや緑谷くんと組むだろうと思っていたけど、どういうわけか別の人達とチームを組んでいた。
お茶子ちゃんはやっぱり緑谷くんとだ。彼女のチームは、他に常闇くんと
女の子。女の子は、確か障害物競走でアイテムを使っていたから、サポート科だ。アイテム可なのは公平さを保つため、だったっけ。
騎馬戦はポイント制で、障害物競走を1位でゴールした緑谷くんのポイントは、桁違いの1000万。私なら、緑谷くんと同じチームにはなりたくない。
「大丈夫?3人も乗ってるけど……」
「あぁ、心配ない。力には自信がある」
私は障子くん達と組むことにした。そこはまともな騎馬を作らず、体の大きな障子くんに梅雨ちゃんと峰田くんが乗る、という作戦を立てていた。組んでくれる人も正直見当たらず、一人分余っているからと入れてもらえたのだ。
「峰田はハチマキを取られないよう注意。蛙吹は腕の隙間から他チームを狙う。水無月はいざというとき変形で防御。……で、いいな?」
「了解です隊長!」
「オイラが隊長じゃないのかよぉ!アイデア出したのオイラだぞぉ!」
峰田くんは人間性が問われるので、隊長はすぐに解任されると思います。
「咲涼ちゃん、飯田ちゃんと違うチームで良かったの?」
「うん、飯田くんに頼りきりじゃダメだし、あっちはあっちでチームが決まってたし」
確かにほぼ行動を共にしているけど、それが落ち着くだけで、こんな時まで「飯田くんと一緒がいい!」なんて言い出す私じゃない。騎手の轟くんが私に声をかけてきたならともかく、私から轟くんに掛け合うことはないだろう。
同じチームになって勝ち進んで、その先で今度は戦うことになったらもっとツラい。もちろんそれは、このチームにおいてもそうだ。
最後は1対1で戦うことになると思うけど、梅雨ちゃんや障子くんに勝てる自信はない。騎馬戦、勝ちたいような、勝ちたくないような……。峰田くんには勝てそう。
「そろそろ始まるわ」
「カウントダウン!3!……2!……1!
START!」
プレゼント・マイクの掛け声と共に一斉に動き出す。狙いはほとんど1000万。障子くんも緑谷くん達へ向かって走り出した。
けれど緑谷くんのチームはすごい。常闇くんのダークシャドウが居て間合いに入れないし、サポート科のアイテムを駆使して逃げ回っている。他と歩調を合わせなくていい障子くんは、いくらか地上での機動性はいいのだけれど、空をいかれては太刀打ちできない。
「……あれっ、峰田くん、ポイントは!?」
「な、ない!」
腕の隙間から見えた電光掲示板に映る現在の保持ポイント。300か400ほどあったポイントが、いつの間にか0になっていた。誰かと対峙はしていないし、梅雨ちゃんみたいに遠くからでも狙える人がいるのか。
「障子くん、物間って人、狙いにいこう」
どうせ失うものがないなら、持っている人から奪いに行こう。でも1000万はダメ。あれを持つのは博打が過ぎる。狙うなら複数枚ハチマキを持っている人がいい。運が良ければ2枚や3枚取れるかも。
轟くんチームも複数枚持っているみたいだが、それこそ博打だ。轟くんは頭がいいから色々考えてメンバーを決めているだろうし、轟くんの氷が怖い。八百万さんの創造だって厄介だもの。
「峰田くんはもぎもぎで騎馬の足元を固定させて」
私と梅雨ちゃんでハチマキを狙う。相手が怒って向かって来ようとしても、もぎもぎで足と地面を繋げられちゃ動けない。
「水無月の変形で靴をコンクリートに埋めさせた方が確実じゃねぇか?」
「可哀想でしょ、それは!」
モラルがない!
それに変形はまだ触らないとできない。1人だけ近くに行くのって怖くない?
物間くんのポイントを狙いにいったとき、爆豪くんがそれをかすめ取っていってしまったし、上鳴くんの電気のせいでビリビリきたり氷で障子くんが固められたり、散々だった。
氷は水に直して解消できるが、私達を襲う痺れはどうにもならない。
轟くんと緑谷くんの勝負は、飯田くんのレシプロバースト、という技により終わりを迎えた。あんなの初めて見た。技を出したあとはマフラーから黒い煙が出ていて、故障したかのように見える。
私たちは結局何もできないまま敗退。でも飯田くんやお茶子ちゃん達は勝ち進んだ。負けたとしても、これだっていい経験である。
「残念だったね……」
「また来年頑張りましょ」
「障子……次もオイラと組んでくれよ……」
「……それはそのとき考えよう」
「来年もまた騎馬戦とは限らないでしょ!」