地獄への道は善意で舗装されている。

□決戦、バトルロイヤル!
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「ごめんな、こいつ心がアレだから……A組も自主練?」
「えぇ、全員ではないですが……重要な期末テストですもの」
「そっか!じゃあ一緒にやろうよ、たまにはいいんじゃないかな」
「それはいい提案だ、拳藤君!」


そんなこんなで、AB合同自主練習が始まった。もともとB組に付き添いをしていたプレゼント・マイクはちょっと仕事があるからと戻っていき、校長先生が残ってくださった。

自主練と言ってもどうしようか。B組のみんなの個性はよく知らない。トーナメントに残った人ならば当然印象には残っているが、そうでない人たちはあまり。彼らも私のことはよく分からないのではないだろうか。活躍もしてないし。


「お前、ヒーロー殺しにあったって奴か!?」
「そ、そうですが何ですか!?」


突然鉄哲くんに指をさされた。失礼だぞ。そういうすぐ行動に出ちゃうようなところ切島くんと似てますね。さすがです。


「お前、女なのにガッツあるな、驚いたぜ……!」
「あ、ありがとうございます?」



キラキラした目を向けられて困惑する。顔が怖いけれど悪い人ではないみたい。そもそもヒーローになるという人に悪い人はいないだろう。しかし、ちょっとうるさい。何かのスイッチが入ったのか、男とは何たるかという熱弁をし始めてしまい、話しかけても返してくれなくなった。

止めに入ってくれた拳藤さんでさえ相手にされていなかった。どういうメンツ揃ってるんだB組!


「おい鉄哲!うるさいぞ!」
「あっ……すまねぇ!」


物間くんのおかげで鉄哲くんの熱い語りから逃れることができた。結構いい人じゃないか、物間寧人!



練習はどうしようか、と話しあった結果、1チーム4人、計3チームのバトルロイヤルとなった。

勝負は1回きり。2つのチーム全員が脱落するまで行い、残ったのがたった1人でも、他チームが脱落すればそのチームの勝ちとなる。脱落の判定は、体育祭と同じで決められた線の外に出るか、行動不能となった場合。


人数の都合上チームはA組B組混合で、くじで決めた。ちなみに私は緑谷くん、塩崎さん、そして泡瀬洋雪くんと同じチームだ。泡瀬くんの個性は溶接。物と物をくっつけることができるそうだ。いざというとき便利そう。


「俺自身ともくっつくことができるんだ。緑谷、腕貸してくれるか」
「えっ、うんいいよ」


緑谷くんの腕に、クロスするよう腕を重ねた泡瀬くん。反対の手でその部分を触ると、皮膚が伸びるかのようにしてくっついた。泡瀬くんが腕を動かせば、自然と緑谷くんも動いてしまう。

無理に取ろうとしたらどうなってしまうのか聞いたら、お察しのとおり、とだけ返された。……人体でやってはいけないだろう、確実に。


「敵同士をくっつけて動けなくしたり、腕を体に溶接してしまっても敵は動かなくなるな。敵を自分に溶接してしまうっていう大胆なこともできそうだ……馬鹿力な敵は溶接も破ってきてしまうかもしれない、そうしたら……」

「なにこれ」
「いつものことです」



誰であっても個性分析は欠かさない。ヒーロー、個性オタクと言えばそれまでだけど、緑谷くんの情報はどの場面でも役に立つはず。彼は何年もヒーローを見続けて、観察眼だって養われているだろうし、いずれプロヒーローになったとき、作戦をたてつつ自分も戦えるオールラウンダーになりそうだ。

そうなればナンバーワンも夢じゃ……ないかも。



「そろそろ始めていいー?」

「3人とも!聞いてほしいんだけど……」
「……緑谷くん?」



スタートの合図と共に各々が個性を発動した。誰が誰を封するのか、それがそれぞれのチームで重要となるはず。しかし彼なら何も関係ない。ただ1人残ればチームの勝ちとなるのだから、仲間を犠牲にしてしまってでも勝ちを狙える。


「そうくると、思ってたよ!轟くん!」


鉄哲くん、拳藤さん、そして私たちのチーム全員が氷により足が動かなくなった。しかし私の個性で氷を溶かしたことで脱落は免れる。



「ちっ……まぁ当然か」



轟くんが最初に氷を出すであろうことは、あまり考えなくても分かること。初めてのヒーロー基礎学のときだって、体育祭のときだって、氷による一瞬の勝負が多かった。この大人数なら余計にそう考えるはず。


轟くんチームのメンバーは飯田くん、物間くん、そしてお茶子ちゃん。それぞれがそれぞれのやり方で氷を避けていた。

緑谷くんの作戦は、まず轟くんの相手は誰もしないこと。彼が居るのは厄介ではあるけど、それは全員がそうなのだ。タイマンで戦っても勝てる相手ではないので、敵が減ってからみんなでやろう、という。

卑怯かもしれないけど、と苦笑いしていたが、バトルロイヤルはそんなものだろう。


機動力の高い飯田くんには緑谷くんが向かう。寒さで動きの鈍くなった梅雨ちゃんを塩崎さんと泡瀬くんが拘束して、私は物間くんと相対した。


「なぁに!?君が僕に勝てるの!?」
「やらなきゃ分かんないよ!」



私がそう返すと、物間くんはなにそれ!とひょうひょうと笑った。今に見てろよ!








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