地獄への道は善意で舗装されている。

□レッツショッピング。
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「み、三奈ちゃん、泣かないでよ!クリアしたじゃん!ね!大丈夫だよ!」
「ぅぇっ……ひっ……でも、瓦礫に埋まってただけで……クリアしたの水無月だし……」
「どんでん返しがあるかも!」


制服に着替え教室に戻ると、それぞれが反省論などを語り合っていた。その中で慰め合いも起きており、クリアできなかった切島くんと砂糖くん、上鳴くんと三奈ちゃんが、とても重い空気だった。

切島くんたちの演習試験の様子はともかく、上鳴くんたちは良かった……と思う。三奈ちゃんもゲートに向かって頑張っていたはずだし、上鳴くんのおかげで私は動けたし。


「上鳴くん!最後、びりびりーって放電したでしょ!」
「え?あー、したっけか?」
「した!ありがとう!あれ、ほんと助かった!」


上鳴くんの手を持ってぶんぶん振ると、反対の手で頭を掻きながら答えた。


「んー、なんかわかんねぇけど、礼はデートで……」
上鳴君ッ!


ずんずん歩いてきた飯田くんは、上鳴くんに「今何を言おうとしたんだ!」と怒る。



「ごめんね上鳴くん、私、飯田くんのだから」
「くっそぉー!リア充がぁっ!」


峰田くんの叫びと同時にドアが開かれ、相澤先生が入ってきた。残念ながら赤点が出た、と言う先生に、例の数名が目をつぶった。


「林間合宿は全員でいきます」
どんでん返しきたぁっ!



赤点のメンバーは、合宿内で別に補習時間を設けられた。学校に残るより大変だそうだが、ひとまず全員で行けることに喜びを覚えた。


合宿は1週間もあり、色々と必要なものがある。そこで透ちゃんが、明日は休みだしみんなで買い物に行こうよ!と提案した。大型ショッピングモールなら何でも揃うはず。たまにはそういうのもいい。靴とカバンと服も欲しいし、それから……。





「ってなわけでやってきました!」
「ショッピングモール!」
「6本腕の貴方にも!ふくらはぎ激ゴツの貴方にも!」
「きっと見つかるオンリーワン!」


「テンション高いねぇ、三奈ちゃんに咲涼ちゃん」



昨日から楽しみにしてたんだもの。眠れなくて今日は寝坊しそうになった。母親に叩き起されなければ、飯田くんが来るまで寝ていたと思う。



「ね、靴みにいこ!」
「ウチはキャリーバッグ買わなきゃ」
「みんな目的違うな。大人数だし分かれて回ろうぜ!」


切島くんの言葉で、それぞれの目的地へ向かった。三奈ちゃんと透ちゃんが靴を見に行くというので私も着いていくことに。上鳴くんと飯田くんも靴屋さんに行くそうだ。


「ふくらはぎ激ゴツって飯田くんのこと?」
「うん。飯田の足ってエンジン入ってるから、1人だけゴツゴツじゃない?」
「ズボンはくの大変そうだよねぇ」


三奈ちゃんと透ちゃんが「エンジンで服破けちゃうね!」「燃えたりするのかな?」なんて会話を続ける。本人がすぐそこに居るんだから聞けばいいのに。


やがて着いた靴屋さん。林間合宿、というくらいだから、自然に囲まれた場所にいくだろうし、足にフィットした運動靴みたいなのが欲しいな。小学校のときって、結構そういうのはくよね。マジックテープ式のやつ。


いくつか試しばきしてみて、見た目の気に入った1足を購入した。青に白いラインの入った比較的シンプルなものだ。他にも白基調のものがあったけど、絶対に汚れすぎてしまうからやめた。



「次どこ行く?」
「私、ちょっと服欲しいな」
「私も服ほしいー!」

「俺たちはどうしようか」
「飯田くんたちも行くの!」



せっかくみんなで来たんだから付き合ってもらいます!と言えば、飯田くんは仕方ないと言いたげに微笑んで、上鳴くんは「俺も服とか見たかったしいいけど」と苦笑いした。

服屋さんはたくさんある。とりあえず1番近いところに向かった。付き合ってもらいます、と言ったものの、服は一緒に見たりしない。私は軽く上に羽織れるものが欲しいだけなのですぐ終わるかもしれないが、もう2人はどうだろう。女の子の買い物は長いのだ。


「水無月、このパーカー可愛いんじゃない?」
「こっちも可愛いよ!」
「水無月にはこっち!」
「こっちですぅ〜!」


三奈ちゃんがもっていたのは水色のパーカー、透ちゃんがもっていたのは薄ピンク。どちらも可愛らしいデザインだ。


「どっちがいい!?」
「えーと、どっちも?」
「どっちかッ!」


あーだこーだと言い争いを続け、2人は私に顔を向けた。どっちかなんて選べないし、かといって両方買うっていうのもなぁ。


「どうしたんだ?」
「飯田!水無月にはどっちのパーカーがいいと思う!?」
「パーカー?」


買い物を終えたらしい飯田くんがやってきて、首をかしげた。顎に手を当てて悩んでいた様子だったが、やがて「少し待っていてくれ」とどこかへ行ってしまい、戻ってきたときには手に別のパーカーを持っていた。


「水無月君にはこれだろう」
「あたしらが飯田に勝てるわけないじゃん!」


やめだ!と持っていたパーカーをそれぞれ戻す女子たち。私は飯田くんが持ってきた白いパーカーを受け取った。


「ありがとう、選んでくれて」
「いや、いいんだ。君にはこれがいいと、思って」
「私って白っぽいかな?」



だけど、飯田くんに選んでもらえて、ただ嬉しい。何色だって着る。少し話していただけなのに、三奈ちゃんから「イチャつくな!」と怒られてしまった。


「飯田くん」
「ん?」
「2人で、回りませんか」


飯田くんはポカンとしてから、小さくうなずいて手を繋いだ。










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