ひどい病気には思い切った処置を。

□独占欲も愛の証。
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「オプティマスさん、大丈夫ですか?」
「あぁ……大丈夫だ」


本当かなぁ。ずっとこうして抱き締められてる。あったかくて心地いい、けど……やっぱり苦しいかも。


「……オプティマスさんは、したくないんですか?」
「そんなはずないだろう! 私はいつでも君に触れたいと思ってる。唇を重ね、こんな邪魔な布など引き剥がしたいといつも……」


私の服を軽く引っ張って呟くオプティマスさん。まずい、口が滑った、なんて顔をしてこちらを見る。


「違う、そうではなく、私は、その……!」
「……違うんですか?」
「ち、違う、っ! いや、違うわけでは……だが……」
「はははっ! ごめんなさい、冗談です」


これじゃあ、さっきと立場が逆だ。


「私は、オプティマスさんだから……初めてでも怖くないですよ」
「咲涼……」
「ちょっと、えっ? オプティマスさん、ちょっと、……」


ぐっ、と眉間にしわを寄せ、眉尻がわずかに下がり、何かを堪えるように噛み締めている。苦しげな表情は、何だか、こう……もしかして。


「泣いてるんですか……?」
「いや……」


うそだ。確かに涙は流れていないけど、その顔は泣いてるよ。私は貴方が本来の姿だったとしても、表情の変化をかなり読み取れるつもり。人間の姿となって分かりやすくなった今、それが不可能になるはずもない。


「咲涼が、そんなことを考えていたなんて……思いもよらなくて……私は、咲涼に、愛されているのだと……」
「オプティマスさん……」


やだな。そんな泣くことないじゃない。貴方が望むのならもっともっと好きだと告げるし、キスもしたいし……もっと一緒に居たい。


「私たち、ちょっと話し合いが必要だったのかも」
「そう、だな。だが今はもう……気にすることはない」
「うん……」


オプティマスさんは私よりも長い時間を生きてるから、たくさんの経験をしているんだろうと思ってた。心を読むことはできなくても、私のことなんて手に取るように分かっちゃうんだろうな、って漠然と思ってた。

でも、全然違った。だってオプティマスさんも私も、それぞれひとつの生き物だから、伝え合わないと理解し合えないんだ。すごく当たり前のことなのに、分かってなかった。

私はオプティマスさんの端正な顔立ちを眺めて、心做しか赤くなった目元を撫でた。私の前では、そういう、弱い部分も見せてほしいな。


「オプティマスさん、他に言いたいこととかありませんか? この際だから全部言っちゃった方がいいですよ!」
「ふむ、それなら……」


オプティマスさんは顔を撫でる私の手を掴んだ。それを自分の口元へ持っていき、ちゅ、と軽く口付ける。見上げるようにこちらを見る視線が鋭くて、すごくドキドキしちゃう。


「敬語も敬称もやめてくれ」
「え……」


そんなこと? それくらいなら、わざわざ頼まれなくてもきっとできる。


「分かりました! ……あっ」
「ん……?」
「大丈夫、分かってます、オプティマスさん、できます! ……えーと、あの……」


どうしよう。今までずっとこうやって話していたから、いざ敬語をやめようとするとできない。さん付けだって慣れてしまってるし。

オプティマス、オプティマス、オプティマス……口の中でもごもご言う分には問題ない。よし、いける!


「オプティマスさん!」
「……」
「……」


どう、しようね。


「私は君の恋人だ。それなのによそよそしく呼ばれなければならないのか?」
「ごめんなさい、つい……」
「サイドスワイプもジャズも、あんなに距離が近いのに?」


居た堪れない。厳しい視線から逃げるように床を見つめた。

確かにそうです。ごもっともです。あのふたりはかなり前から呼び捨てのタメ口……。でもあれって、友達だからこそできるっていうのもありませんか? ねっ?

弁明しようと顔を戻すと、やっぱり鋭く強い視線がこちらを向けられていた。……どうしよう……。


「以前は悪戯に呼び捨てをすることもあったというのに……」


そんなこともあったかもしれない。あのときは調子に乗っていた。


「咲涼が私の名前を呼んでくれるならそれだけで嬉しい。だが、他の男が私よりも距離が近いのは……許せないな」
「ごめんなさい……でも、私、一番好きなのはオプティマスさんですよ!」
「もちろんだ。そうでなければ私の気が狂ってしまう」


やだ……やっぱり束縛っぽいかも……。
うーん、でもオプティマスさんは人間ではないし、世間と同じである必要は全くないよね? 私とオプティマスさんは、私達のやり方があるんだし。

世の中の普通がどんなものか分からないけど、オプティマスさんが私のそばに居てくれるなら何だっていい。最期に思い浮かべる顔は、彼の笑顔がいい。


「私の恋人は独占欲が強くてしょうがないんだから。ねっ、オプティマスさん?」
「ふふ、あぁ……私は仕方の無い男だ」






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