ひどい病気には思い切った処置を。

□デートのおやくそく。
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「咲涼は? 私に言いたいことはないのか?」
「えー、言いたいこと……」


うーん、何だろう? 特別なことは思いつかない……いや。


「もし、戦場に行くことがあったら……絶対に帰ってきてください。ぼんやりしてないで、ちゃんと敵を倒して、ただいまって言ってほしい……」
「……あぁ、約束しよう」


最後に見る貴方の顔が死に顔だなんて絶対に嫌だから。私の知らない所で死んでくるなんて許さない。貴方の死ぬ瞬間ですら、大切な思い出として取っておきたい。

でも、でも、どうか、死なないで。


「私は必ず君の元へ帰ってくる。もう二度と死ぬことは無い」
「信じますからね!」


約束を破ったら、そのときこそ殴ってやる。オプティマスさんの綺麗な顔が青あざで色男になるまで殴って、ざまぁみろ、約束を破ったせいだって……笑うんだ。

それまでは、オプティマスさんの『殴っていい』という言質はとっておくことにする!


「それから……私が死んだときは、他のいいひとでも見つけてくださいね」
「……それは無理だ。私はもう咲涼のことしか考えられない。他の誰かなど、想像もしたくない!」
「わたし、……わたしも、です。オプティマスさん」
「咲涼、愛している……」


光栄だ。私みたいな女でも、こんな素敵なひとに目いっぱい愛してもらえるなんて。夢に見た事もなかったな。
それに、その相手が宇宙人だなんて! 事実は小説よりも奇なり、なんて言うけど……ふふ、いくら何でも、こんなのおかしすぎる。


「はーっ! なんかスッキリした! ラチェットさんには感謝しなきゃ」
「ラチェット?」
「うん、だってラチェットさんが『オプティマスの所に行きなさい』って言ってくれたから」


それがなきゃ今はここに居ないだろう。いつも話を聞いてくれて、相談に乗ってくれて、本当に感謝してる。優しくて面倒見も良くて、たまにブラックな一面も出てくるけど、それがラチェットさんだ。
本当に、お礼言わなきゃ。


……うん、子供みたいに泣いて情けないのは置いといて、何だかんだ解決はしたんじゃないかな? お互いの気持ちは分かったし、これからはもっと、歩み寄れるはず。


「ラチェットには私からも礼を伝えておこう。いつも咲涼が世話になっているからな」
「そんなお父さんみたいなこと……」
「お父さん? 恋人、だろう?」
「そ、う、です……!」


低い声でわざとらしく囁くから、私のこと弄んでるんじゃないかなって思っちゃう。

このひとは自分の顔も声も何もかもが優れていることをよく分かっててやってるんだよね?
私がそれにすっごく弱いってことも、分かってるんだよね?


「咲涼、明後日にでも……デートに行かないか」
「明後日? もちろん行きたいです! けど……お仕事は大丈夫ですか?」


オプティマスさんは何度か頷いた。私を膝の上に座らせ、デスクの上の書類をぱらぱらと見て確認しているようだ。


「本当に重要な書類のチェックは済ませた。あとは細かなものだから問題ない」


じゃあ! デートだ! やったぁ!
一緒に出かけたのはまだ一回だけだよね。そのとき晴れてお付き合いを始めたから……三週間……うん? 一か月くらい前……かな……?

結構前だなぁ。


「おしゃれして行かなきゃ」
「咲涼はいつでも綺麗だが」
「全然だめです! デートは気合い入れていくものですよ! ましてや、お付き合いを始めてからは初めてのデートなんですから」


私の言葉に、オプティマスさんはふむと頷いて何か考え込んでいる様子だ。おっ? もしかして、オプティマスさんもおしゃれしてくるのかな?

いつもビークルモードとよく似たファイヤーパターンのロングコートだから、たまには違う服も素敵だろうなぁ。もちろん、このコートも大好きなんだけど。


「じゃあ明日は仕事して……」


仕事。そうだ、私、仕事中にオプティマスさんに会いたくって集中できてないんだった。それでここまで来たんだった。

オプティマスさんと話し合って色々変わったような気がするけど、仕事中に会えないことは変わらない。
でもこれはどうしようもないことだ。私がここに居てもできることは限られてくるし、それなら医務室の方が手伝えることは多い。


「咲涼? どうした?」
「あの、いや……仕事中は、会えなくて寂しいなって……」


でも朝晩は会えるだろうし、少なくとも明日を乗り切れば明後日は一緒に居られるし……。


「それはどうにかしたいのだが……」
「いやいやいや、大丈夫です! 仕事は仕事だから、ちゃんとやらなきゃ。でも、休憩中は会いに来てもいいですか?」


もちろん、と頷くオプティマスさん。寂しくなったら、お手洗いに行くふりして押し掛けちゃおうかな。

ラチェットさんにバレたら大目玉を食らうだろうけど!






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