〜非日常的学園生活〜

□記憶の道を辿ろうか。 8
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今日のクラスの空気は最悪だった。
狛枝の「やあおはよう!今日もいい日になるといいね!!」と教室に入ってきた瞬間に叫ぶ事が当たり前になってしまっていたはずなのに、今日はそれがなかった。
同じクラスになったモブ女数名(第一話で話しかけてた奴ら)もその毎日の光景に呆れていつの間にか好きでも何でもなくなったあの伝説の言葉が消えたのだ。
それに加え、いつもなら狛枝と日向が楽しそうに会話をし、そこに七海が来たり左右田が来たり、と楽しそう(二度目)な会話が聞こえるのだが近寄る様子も顔を見る様子も何もない。

「どどど…どうしたんですかぁ狛枝さん…、そっそれに日向さんもぉ…ッ」
「そんなんわたしが知るわけないじゃん!…というかいつ喋っていって言ったのよ!ゲロブタのクセに!!」
「はうぅぅぅ…さ、西園寺さんだけに言ったんじゃ、な、…ないですよぉ…」
「あ゛…?」
「ひぇぇぇぇッ…!」
「こらこら日寄子ちゃん、蜜柑ちゃんいじめちゃ駄目だよー…?」
「う…、コイツが悪いんだよ!!」
「もう…仲良くしないと…。」

苦笑いで西園寺に対して笑いかけつつも、心配と違和感で日向の方へ顔を向けてみた。特に何もなさそうに開けられた窓の外を眺めているだけだった。
何を見てるかは分からないが見るからに暑そうな外の景色を見つめていた。鬱陶しくうるさいセミの鳴き声と目を細めたくなる程の眩しい太陽の光が夏を表した。
まあ、そんな事はどうでもいい。今は狛枝と日向に何があったのか、が、大事だ。
…なのに聞くに聞けない空気が邪魔をして、この瞬間も何も変わることはない。よっぽどのことがあるに決まっているのだがそれが何なのかが謎のままだ。
空気に耐えられずにもう数名のクラスメイトは教室から逃げるように出て行った。
そんな空気が今日はずっと続いているので地味に本調子にならない。歯車の様な何かが狂っている感じだ。

「ねえ、狛枝くん。」

勇者かッ!!!
クラス全員の視線が一点に集まった。外ハネの髪が揺れ、おっとりとした彼女の周りは髪でさえふわふわと穏やかに見えてたまらなかった。七海は狛枝の机の前で静かに呼びかけてみた。
文庫本をじっと見つめていた狛枝が七海の方へ顔を向けた。どこか不自然な笑顔が七海の視界に映り込んだ。

「何かな。七海さん。」
「ねえ、…やっぱり昨日話してたことが原因…なの?」

罪悪感、だか分からないが始まりはそこだったのかもという考えが浮かんでいた。勿論今聞くべきは迷ったし、聞きずらかった。
だが、それ以上に…と思ったから今こうして狛枝に一対一で話しているのだ。
狛枝は「え…」と零したが小さく「ああ…。」と笑いながら首を振った。七海は閉じていた口を少し開き消え入りそうな驚きの言葉を言った。

「違う違う。あの後の話だよ。」

ガタ…
静かにモノが動く音がした。日向がゆっくりと椅子を動かし立ち上がった。真顔ともいえる顔で教室を出て行く。
日向の方へ視線が移ったがごくりとつばを飲み込み、また二人の方へ戻った。やっぱり気になるものだ。見てはいけない気がしても、やっぱり。
日向が廊下を出て姿が見えなくなるとそれを見ていた狛枝はため息をついた。それは憂鬱感が混ざったようなため息で酷く顔色が悪くなる。

「う、ううん…。これは、どっちが悪いんだろ…。」
「…?」
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