7番目の幻想

□prologue
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私は、いわゆる記憶喪失という状態だ。
このスラムの教会でエアリスが見つけてくれた当初は、ルタリスという自分の名前すら覚えていなかった。まぁ、すぐに思い出せたからよかったのだが。


自分のことが何もわからないというのは、とても気持ち悪い。だから、自分がどういう人物だったのか思い出すために外に出たいと言ったことがあった。でもその時、なぜかエアリスに猛反対されてしまった。
危ないから、と彼女は言った。
危ない?
もちろん気になったさ。
だからエアリスに、危ないって何なんだ? おまえは何を知っているのか? 知っていることはできる限り教えてくれ、と言い寄った。
エアリスには悪いことをしたと思っている。でも彼女は困った顔はしたものの嫌な顔は全くせずに、私に知っていることを話してくれたんだ。
エアリスは本当に良い子だ。私を助けてくれたのがエアリスで本当によかったと思っている。



まずエアリスから語られたのは、世間では私が英雄と呼ばれているということだった。
私は、神羅カンパニーという超一流企業の、ソルジャーという兵士だったという。しかも1stという最高クラス。ソルジャー・クラス1stは両手で数えられる程度しかいないらしいから、私は本当に強いのだろう。
その中でも、私はセフィロスというソルジャーと並んで特に強かった、とエアリスは言った。
その時、そのセフィロスという名前が引っかかったから、セフィロスとは誰かと尋ねてみた。
彼女は、セフィロスも私と同じく英雄と呼ばれていると言った。世間では、私は“茶髪の英雄”、セフィロスは“銀髪の英雄”と呼ばれているという。私とセフィロスは戦地でも普段でも名コンビだったらしく、未だにファンが非常に多いとか。ただただ強いというだけではなく、クールなセフィロスとフレンドリーなルタリスという組み合わせも世間に受けたらしい。
…私がフレンドリー?

以前、私は人当たりがよくて人懐っこく、さらに感情豊かでいつもにこにこしてたそうな。
…我ながら信じられない。
今の私の淡々とした性格は何かセフィロスみたいだとよく言われる。
エアリスは、記憶が戻れば性格も戻るんじゃないかとは言っていたが、果たしてどうだろうか。
…話が逸れたな。

エアリスは、今私が外に出れば私のファン達が黙っていないだろう、大騒ぎになってしまって私が色々と危なくなってしまうだろうと、私の身を案じて止めてくれたのだった。
確かに騒がれたくなかったから、助かったな。


その時、私はセフィロスに会えばもっと色々なことを思い出せるのではないかと思った。
でもエアリスは、彼は公式記録では今から5年前の任務時に殉職したことになっている、と言った。
しかし、それは本当かどうかはわからない。なぜなら、当時、私もその任務で殉職したと言われていたからだ。
でも、私は生きている。
だから、セフィロスもどこかで生きているのではないか、というのが私達の考えだ。


エアリスは、私の性格が大きく変わっていたことに驚いたという。
さっきの、私はフレンドリーだったという話だ。
他にも、以前の私は一人称が“俺”だったと話してくれた。
エアリスは以前の私から、自分は女だけど男として育てられてきた、と聞いたと言った。男として扱ってくれと私は言ったらしいが、エアリスにその気はなかったらしい。
ルタリスはきれいなのにもったいない、だそうだ。
まぁ…確かに、私は自分の長めの茶髪はけっこう気に入ってはいる。今はエアリスに緩い三つ編みにされて青いリボンで結ばれているけどな……
まぁ、それはそれで気に入っていたりする。



私が記憶を失くしてからもう5年が経つ。これからもエアリスの姉として、エルミナ母さんの家に厄介になるんだろうと思っていた。
でも、違ったんだ。
私は出会ってしまった。
教会の屋根を突き破って落ちてきたおまえを見た瞬間、衝撃を受けた。
私は、おまえを知っていると思った。
そして、おまえが失われた記憶を取り戻す鍵なんだと直感した。


そう、おまえの名は……



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