7番目の幻想
□始まりは再会
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ルタリスはふーっと呆れたように息を吐いた。そして、堂々と教会に入ってきた黒スーツを着た赤髪の男に視線を移す。
「何の用だ、レノ? 私達の監視って感じじゃないな」
「おー、そう怖い顔すんなよ、エリーゼさん?」
「今はルタリスで結構」
そう2人が話すそばから、何人もの神羅兵が赤髪の男―レノの後ろに集まってくる。
このただならぬ状況にクラウドは身構え、エアリスは彼の後ろにさっと隠れた。
しかし、ルタリスは涼しい顔をしている。その表情を崩さず、クラウドにそっと耳打ちをした。
「クラウド、エアリスを家まで送ってくれないか?」
「ああ…構わないが」
「じゃあ、頼む」
ルタリスはクラウドに頷き、そのままエアリスに目配せをする。エアリスは不安そうだったものの、強く頷いた。
「上から抜けられる。行け!」
2人が動き出すのを見届けると、ルタリスはレノに近づいて行く。レノはおどけたように肩をすくめた。
「あんたの捕獲も今回の仕事のうちなんだけどな」
「私がそう簡単に捕まると思うか?」
「全っ然思わないぞ、と。だからこんなに兵を連れてきたんだ」
「あっそ。それはご苦労様」
ルタリスは歩みは止めずに、すっと2本の刀を抜いた。
兵達がどよめく。
まさか刀を抜くとは思ってもいなかったのだろう。
しかし、レノだけは動じていない。
そんな彼らの対比に、ルタリスはくつくつと笑う。
「生憎だが、ここから先は立ち入り禁止だ。おまえ達は花をぐしゃぐしゃにしかねないからな」
「れ、レノさん! 殺りますか?」
「ああ。殺ってみろよ、と」
健気にも震える手でルタリスに銃を向けた神羅兵達と今にも笑い出しそうなレノ。
その彼らの対比にルタリスはまた笑うと、大きく刀を振った。
***
「なぁ、エアリス。あれは…大丈夫なのか?」
無事に教会から脱出しエアリスの家へ向かう途中、クラウドはずっと気になっていたことを聞いてみた。
「んー? あれってなぁに?」
「ああ…ルタリスのことだ。あいつ、思いっきり刀を振っていただろう?」
「誰か…殺しちゃってないかってこと?」
「…そうだ」
エアリスは小さく笑って首を横に振る。
「大丈夫。お姉ちゃん、人にケガさせるようなことはもうしないって言ってた」
「そうなのか?」
「うん。それに、お姉ちゃん、すごく強いから。お姉ちゃんがケガするようなこともないよ」
「そう、か…」
クラウドはふと何かを考えるように黙り込んだ。
一瞬、沈黙が2人を包む。
「もう1つ、聞いていいか?」
「うん。いいよ」
「あんたはルタリスのことをずっと『お姉ちゃん』って呼んでいるが…本当に姉妹なのか?」
「ううん。ルタリスは義理のお姉ちゃん。今、一緒に住んでるからっていうのもあるけど、お姉ちゃんは、私が小さい時からずっと会いに来てくれたの」
「…本当の家族みたいなもの、ってことか」
「うん、そういうこと!」
エアリスはぱっと花が咲くように笑った。
それはきっと、ルタリスが本当に心から慕われている証拠なのだろう。
「私の家、もうすぐよ」
そのままエアリスについて歩いて行くと、スラムには珍しい、開けた明るい場所に出た。
そこには、花に囲まれた綺麗な家が一軒。
「結局、ルタリスは来なかったな」
「大丈夫! そのうち来るから」
エアリスは「クラウドって意外と心配性なのね!」と、笑って家へ駆けていった。
残されたクラウドはふっと苦笑すると、エアリスの後を追った。