7番目の幻想

□自らの意志で
2ページ/4ページ



「くそっ、来やがった!」

バレットは頭上にやって来たヘリを腕の銃で撃とうとする。しかしそれより早くヘリから男が1人が飛び降り、ヘリは飛び去って行った。

飛び降りて来たのは、レノだった。
ルタリスはレノが操作盤に向かうのを見て、彼が何をしようとしているのか気づいた。

「レノ! よせ!」
「悪いな…仕事なんだぞ、と」

レノはそうぽつりと呟くと、ルタリスに向かって魔法を放つ。たちまち三角形のバリアがルタリスを囲んだ。

「おい! レノを止めろ!」

ルタリスは拳をバリアに打ち付けながら叫ぶ。その声に反応したクラウドがレノに向かっていく。それと同時にティファがルタリスのもとへ来て、バリアを叩き割ってくれた。

「遅かったな、と。このスイッチを押せば…はい、作業終了」

プレートを支える柱の爆破スイッチが、押されてしまった。しかしルタリスは、レノが一瞬浮かべた沈鬱な表情を見逃さなかった。

彼だって、こんなこと好きでやっているわけではない。あくまで“仕事”だからだ。彼がやらなければ誰か別のタークスがやるだけであって、結局この柱の爆破が実行されることに変わりはないのだ。

ルタリスは知っていた。レノは、ああ見えて実はとても仲間思いだということを。誰かがこんな苦い思いをするくらいなら自分が、とこの仕事を引き受けたのだろう。


「解除しなきゃ! ルタリス、何かわかる!?」
「あ…うん、やってみる」
「なっ! ルタリスだとっ!?」

バレットは驚いた声をあげた。
それは当然だろう。仲間が口にした名前は、5年前に死んだはずの英雄のものだったから。

「詳しいことは後で話す! 今は集中しろ!」

逃げようとしたレノを阻止しつつクラウドはバレットに言った。そこにティファも加わり、ルタリスを除く4人は戦闘体勢に入った。



ルタリスは気が気でなかった。
レノもクラウドもティファも、自分にとって大切な人だ。バレットもクラウドとティファの大切な仲間である。だから、ここにいる誰1人とて傷付いてほしくない。
何にせよ、この爆破装置を止めることはできない。自分では、とても手に負えない。
…となると、今自分にできることは1つだけ。


「やめろ」

きぃん…と刃と刃がぶつかる音が響いた。

「ルタリス…なぜ…?」

クラウドが驚いたように目の前のルタリスを見つめる。

「私の大切な人同士が傷付け合ってるのを見て、黙っていられると思うか?」

ルタリスは悲しげに首を振った。そして背後に庇ったレノに声をかける。

「レノ、行け」
「ルタリス…」
「早く!!」

レノはルタリスの声に押されてよろよろと駆け出し、下に飛び降りた。

「てめぇ…何でアイツを逃がした!?」
「彼を殺したところで何になる? それに、もう装置を止めることはできない。早く逃げないとプレートの下敷きだぞ」
「そうだな。それが最も賢明な判断だろう」

不意に聞こえた声は、ルタリスにとっては慣れ親しんだ人のものだった。

「ツォン! 何でここに?」
「忠告のためだ。エリーゼ…じゃないな…ルタリス、早く逃げろ」
「待って!」

また聞こえた声は、ここにいるはずもない人のものだった。

「「「エアリス!?」」」

ルタリス、クラウド、ティファの声が被る。

「ティファ、大丈夫! あの子、大丈夫だから!」
「エアリス…出てくるなと言っただろう?」
「だって…」
「…ツォン! そこどいて!」

ルタリスは突然そう叫ぶと、ヘリに向かって駆け出し、飛んだ。
否、舞い上がった。
まるで翼があるかのように、ルタリスはふわりとヘリに着地する。そしてクラウド達に叫ぶ。

「私はエアリスと一緒にいる! おまえ達は早くここから逃げろ!」

その一言だけを残し、エアリスとルタリスが乗ったヘリは飛び去ってしまった。



残されたクラウド、ティファ、バレットの3人。突然のことに、逃げるのも忘れて呆然としていた。

「おい…アイツって、神羅の回し者じゃねぇのか?」
「いや、それはない。ルタリスはずっとエアリスと一緒に暮らしてたんだ」
「でもルタリスって神羅のソルジャーだろ!? なら…」

突然響いた爆音がバレットの言葉をかき消した。

「いけない! 逃げるわよ!」
「お…おう!」
「早く来い! このワイヤーが使えそうだ!」

3人はプレートが落ちる直前、なんとか六番街へと逃れることができた。

次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ