7番目の幻想

□つかの間の休息
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自らヘリを降りたルタリスは警護の神羅兵に囲まれていた。そんな彼女に近づいてくる白衣の男が1人。

「久しぶりだな、ルタリス」
「おまえは……っ!?」

急に、立っていられないほどの激しい頭痛に襲われた。ふらりと倒れるようにしてその場に座り込む。
肩に手が置かれたのを感じ、ルタリスはゆっくりと顔を上げた。

「私のことも思い出したか? うん?」
「…宝条」

ルタリスの顔を覗き込んでいたのは、神羅の科学部門統括、宝条その人だった。ルタリスは僅かに笑みを浮かべる。


完全には思い出せてはいないが、あらかた思い出せた。
自分は幼い頃、この神羅ビルの中で育ったのだ。その中でも科学部門の階によく足を運び、そこで様々な研究、実験を見ていた。そして、宝条はそんな自分の育ての親の1人である。


「あんた…変わってないな」
「それはお互い様だろう?」

宝条はポケットから鍵を取り出すと、なんとルタリスの手錠を外した。さすがにこれにはルタリスも驚いた。神羅兵達も然りだ。

「博士! い、いいんですか?」
「ルタリスに手錠など必要ないと思わんかね? 神羅がルタリスに危害を加えることがないように、ルタリスもまた神羅に危害を加えることはない」

宝条はそう言うと、立てるか? とルタリスに手を差し伸べる。ルタリスはその手を取って立ち上がった。

「さて、行くか」
「おい…エアリスはどうするつもりなんだ?」
「古代種の娘は色々と調べなければな。なに、悪いようにはしないさ」
「…信用できないな」
「クックックッ…それなら自分の目で確かめれば良いだろう」
「…わかった。そうさせてもらおう」

ルタリスはツォンに支えられてヘリを降りてきたエアリスに目配せをする。エアリスもそれに気づき、頷いた。ルタリスはふっと微笑み、宝条の後を追った。


***


「ルタリス」

エレベーター内で宝条に呼ばれ、そして手招きをされる。若干不審に思いつつも、ルタリスは彼に近づいた。

「目を閉じろ」
「…目?」

言われるがまま目を閉じると、そこに布のようなものが巻かれるのを感じた。

「…目隠し? 何か見られたら困るようなものでもあるのか?」
「さぁ、どうかな」

ちょうど目的の階に着いたらしく、小さく扉が開く音がした。ルタリスは宝条に手を引かれながら歩いて行く。
ある場所に差し掛かった時、何か気配を感じた。

「なぁ…ここ、何かいるのか?」
「実験サンプルならたくさんいるが?」
「なんか、気配が…」
「気にするな。行くぞ」

ぐっと強く手を引かれ、その場所を足早に通り過ぎた。



ある部屋の中に入ると、目隠しを取られた。

「あ…懐かしいな。あんたの資料室か」
「ほう、しっかり思い出しているようだな」

棚に入りきらなかった本や資料がたくさん積まれた部屋。
昔、ここもよく来たものだ。…LOVELESSの研究以外のものを読んだ記憶が全くないが。ただ思い出していないだけだろうか。


「博士、お疲れ様です」

突然、この部屋に似つかわしくない少年の声が響いた。積み上げられた資料の影からその声の主が姿を現す。
彼はルタリスを見ると目を輝かせた。

「あなたがルタリスさんですね! 初めまして、僕はネーゲルです。宝条博士の助手を務めています」

彼―ネーゲルはぺこりとお辞儀をした。後ろで束ねている黒髪が揺れる。

「ネーゲル、ルタリスのことはおまえに任せる」
「え、僕に? いいんですか? だってあの英雄ルタリスですよ!」
「もちろんだとも。私は古代種の娘の様子を見に行く。ルタリス、おまえはここで休んでいてくれ。今日だけでも色々あっただろう?」

宝条はそう言うと笑いながら部屋を出ていった。ルタリスとネーゲルの2人が部屋に残された。

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