7番目の幻想

□急展開
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さっさと会議室を出たルタリスはすぐ宝条に追いつかれ、ずいぶんと好きに言ってくれたな、と言われてしまった。
言葉だけ見ると怒られているようだが、実のところ彼は面白そうに笑っていた。忠誠心のなさは自分と同じかもしくはそれ以上だろう、とルタリスは思った。

そして今。そのルタリスはまた宝条に目隠しをされて手を引かれていた。何度目だろう。もう慣れてしまった。

「部屋の外に出るたびに目隠しなんて、相当見られたくないものがあるんだな」
「人間は見るなと言われると見たくなってしまう生物だからな」
「それで強制的に目隠しか」
「そうだ」

また、ぐっと手を強く引かれる。何か気配を感じるのは決まってこの時この場所だ。ここにその見られたくないものがあるのだろう。

見られたくないもの。自分が見てはいけないもの。つまり、自分に深い関わりがあるもの。思い当たる節がないわけではない。
しかし、自分自身がそれを思い出すことを拒否している。
そんな気がした。


「あ、博士!」
「ネーゲル、準備は終わったか?」
「はい、すでに。でも…本当にやるんですか?」
「もちろんだとも。ルタリスを部屋まで送ってくれ。私は先に上へ行っている」
「あ…はい」

可愛いサンプルよ…と宝条が呟き、ガラスを軽く叩く音がした。そして離れていく音。

「ルタリスさん、行きましょうか」
「とても穏やかじゃないな。エアリスのことだろう?」

一瞬、繋がれた手に、微かに力が入った。
図星だ。

「…絶対に来ないでくださいよ。本当に」

ぐい、と無言で手を引かれた。手に更に力が込められている。

ネーゲルも、本当はこんなことしたくないと思っているのだろう。彼とエアリスの様子を見る限りでは、2人はとても気が合いそうだった。彼もエアリスを“サンプル”とは見れないのだろう。



「…では、失礼します」

ネーゲルはルタリスを部屋に入れると、そう言ってすぐに出ていってしまった。
目隠し取ってほしかったな…。

「クラウン! いるだろ? 目隠し取ってくれないか?」
「はい、いますよ! ちょっと待ってくださいね」

クラウンに気を遣ってその場に座ると、クラウンが肩によじ登ってくるのを感じた。ちょっとくすぐったい。

「あー、確かにこれは自力では取れませんね」
「だろ? 早く取ってくれ。エアリスが呼んでる。感じるんだ」
「エアリスさんが? じゃあ、それって…」
「ああ、緊急事態だ」

さっと視界が明るくなる。ルタリスは肩にクラウンを乗せたまま立ち上がった。

「おわっ落ちっ…!」
「っと、おまえはここにいてくれ」

落ちかけたクラウンを受け止め、コート下につけているポーチの上に乗せた。ここなら落ちにくいだろう。
しかし、やっぱりちょうどいい大きさである。
ルタリスは扉に駆け寄り、取っ手に手を置いた。扉はすんなりと開く。

「鍵くらいかけろよな…」

ルタリスは小さく頭を振ると、クラウンを連れて上の階に向かった。

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