7番目の幻想
□幾つかの再会
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あの禍々しいモンスター―後にジェノバらしいとわかったが―を何とか倒した後、クラウド達はルタリスを取り返す間もなく船を降りた。
またルーファウスがルタリスを連れていってしまったのなら、今再び接触するのは難しいだろう。また見逃してもらえたらしいだけでも良しとしなければ。彼女を取り返す機会はまだきっとある。
一行が降り立ったのは、人気のリゾート地コスタ・デル・ソルだ。宿で部屋を取って着替えた後、せっかくだから、と休息も兼ねて情報収集を行うことにした。
その時、クラウドはなぜかエアリスとティファと共に行動することになってしまい、バレットとユフィに「両手に花だ」とからかわれてしまった。クラウンは暑さでバテてしまったレッド]Vの介抱で忙しそうだったが、どことなくニヤニヤしていたのをクラウドは見た。
「ね、クラウド、これからどうするの?」
「そうだな…とりあえず情報収集をしたい。次にどこへ行くかも考えないとな」
「ねぇ、情報収集もいいけど、ちょっと休まない? さすがに疲れちゃって」
ティファが近くにあった小さな喫茶店を指差す。
「あ、それいいね。クラウド、ちょっと休も?」
エアリスはクラウドに笑いかけると、ティファと一緒に喫茶店へ向かっていった。クラウドは小さく笑うと彼女達の後を追った。
時間ならまだ十分にある。少しのんびりしても何の問題もないだろう。
「あれ、あの子…」
「ちょっ、エアリス!」
喫茶店に入ってすぐ。エアリスはティファが止めるのも聞かないで1つのテーブルへと近づいていった。
そのテーブルにいたのは、黒髪を後ろで束ねた眼鏡の少年。何か手帳のようなものを熱心に眺めている。
エアリスは彼に声をかけた。
「ねぇ……
君、ネーゲル、だよね?」
ネーゲルと呼ばれた少年は手帳から顔を上げ、エアリスを見た。と、いきなり驚愕の声をあげた。
「うわわっ!? えっ…え、エアリスさん!? エアリスさんですか!?」
「そうよ。今日は1人なの?」
「い、いえ…」
彼は眼鏡を外して手帳の上に置いた。
クラウドとティファはようやく彼の正体に気づいた。
「あ! 宝条の助手の子!?」
「あっ! あなた達はあの時の!!」
ネーゲルは驚きのあまりパッと立ち上がる。危うく倒れかけた椅子を支えると、店員にうるさくしてすみません、と頭を下げた。
「まぁ、3人とも落ち着いて。ネーゲル、少しお話、いいかな?」
エアリスの有無も言わせぬ笑顔に、ネーゲルは頷くしかなかった。
少年ネーゲル。あの宝条の助手ということで警戒していたが、実際に話してみると案外素直でいい子だったな、とクラウドは思った。それはティファも同じらしく、最終的に一番彼と話が弾んでいたように思う。
ネーゲルに、なぜ宝条と共に神羅を離れたのか―この噂はジュノンで耳にした―と聞いても彼は答えてくれなかった。ただ笑って、それは答えられません、と言っただけだった。
しかし、宝条は今どこにいるのか、と聞いた時はすんなりと答えてくれた。白衣のままどこかで寝ているのでは、と曖昧な答えだったが。
クラウドはネーゲルが別れ際に言った一言を思い出す。
『またお話できたら嬉しいです。特にクラウドさん。あなたとはもう一度、ゆっくりと話をしたいです』
それだけなら特に何も思わない。しかし、この後に会った宝条も自分に興味を示したのだ。実験サンプルにならないか、と言っていた。
科学者2人が自分に興味を示すとは、一体何を意味するのだろうか?
結局、今日得られた情報はほぼゼロに等しく、仕方がないから宝条がボソボソと言っていた西へ向かってみよう、とクラウドは思い、ベッドに寝転がった。
さすがリゾート地。微かに聞こえる波の音が心地いい。今日はよく眠れそうだ。