7番目の幻想

□幾つかの再会
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翌朝。クラウドは皆より少し早く起きてもう一度街を巡ってみたが、やはり何も成果は得られなかった。
やはり西へ行くしかないようだ。


クラウドは宿に戻り、すでに起きていた皆にとりあえず西へ向かうことを伝えた。
そして、何となく普段よりも静かな一行がコスタ・デル・ソルを出たその時だった。

「やっと来たか」
「「あ!!」」

女性の声が聞こえ、エアリスと彼女の青バッグの中のクラウンが同時に声をあげた。
そこにいたのは、なんとルタリスだった。見慣れた青コート姿で微笑んでいる。

「お姉ちゃん! よかった、無事だったのね!」
「私は何もされてないよ。大丈夫」
「ほんと? ケガとかしてない?」
「ああ…これくらいかな」

ルタリスは自身の右頬に触れる。そこにはうっすらと鋭いもので切ったような跡があった。クラウドは思わずルタリスに尋ねていた。

「ルタリス。もしかしてその傷は船で、か?」
「うん、そうらしいね」
「『らしい』?」
「何も覚えてないんだ。全部ルーファウスから聞いた」

無理もないだろう。あの時、ルタリスは気を失っていたはずだ。

皆が黙り込んだその時、ルタリスの名を呼んだのは、意外なことにバレットだった。

「あんたがいない時に、エアリスとクラウンと…ティファからも散々あんたについて聞かされた。その…なんだ…神羅だからって疑って悪かった。すまん!」
「…いきなり何を言うかと思ったら。驚いた」

誤解が溶けてよかった、と笑うルタリス。その柔らかな笑みを直に受け、バレットは照れたように頭をかいた。

「…でよ、ルタリス。あんたに聞きてぇことがあるんだ。別に責めてるわけじゃねぇから、正直に答えてくれ」
「わかった。何?」
「左手…見せてくれねぇか…?」

クラウドは、わずかに皆に緊張が走ったのを感じた。やはり、みんな『あれ』を見ていたのだ。

「ああ、これか」

皆の緊張とは裏腹に、ルタリスはあっさりと左手のグローブをとった。そしてキラリと光る、薬指の指輪。

「ルタリス…本当に婚約したんですか?」

おずおずと、しかし単刀直入に尋ねたのはクラウン。皆が思っていたことを代表して聞いた形になるのだが、彼にそんなつもりはないようだ。純粋に気になる、という目をしている。

「表向きはな。でも本当は人質みたいなものさ。私があいつの言うことを聞く代わりに、仲間には手を出さない。交換条件だよ」
「でも…お姉ちゃんはそれでいいの?」

心配そうに尋ねたエアリスに、ルタリスは微笑んだ。

「いい。問題ない。実はな……
10年くらい前に、約束してたんだ」
「約束?」
「そう。社長になったらダメもとでプロポーズする、ってね。私は、返事は期待するな、って答えた」

皆から驚きの声が挙がった。2人の間でそんな約束がされていたなんて、誰が思うだろうか?

「ルタリス…聞いていいか?」
「何だ、クラウド?」
「どうして指輪をしている? 承諾…したのか?」
「どうしてって、断れないだろう? 半分人質なんだから。でも返事は濁しておいた。表向きは好きにしていいけど、ちゃんとした返事は私の記憶が全部戻ってからにしてくれ、って」
「そうか…。でも、ここにいて大丈夫なのか?」
「大丈夫。次に会ったら絶対に連れ戻すって条件付きで釈放してもらった」

ルタリスは笑ってそう答えると、バレットに向き直った。

「でも結局、私は思いっきり神羅側の人間ってことだ。バレット、やっと信じようとしてくれたのに…すまなかったな」
「別に構わねぇよ。何となく予想はしてたしな。でも、少しでも裏切るような素振りを見せたら…」

バレットはそこで言葉を切ると、右腕の銃を突き出す。ルタリスはふっ、と笑うと、その銃を軽く叩いた。

「ああ、その時は好きにすればいいさ」

彼女はそう言うと、クラウドを見た。

「クラウド、私も一緒に行ってもいいか?」
「ああ、もちろんだ」

クラウドは力強く頷き、新顔の紹介は道中ですると言い、歩き始めた。彼に付いていく仲間達を見ていたら、エアリスに腕をつつかれた。

「どうした?」
「お姉ちゃんは…ルーファウスさんのこと、本当に好きなの?」
「…それ、聞く?」

ルタリスは苦笑した。が、すぐに真顔になる。

「正直な話…よくわからない。でも…感謝は、してる」

感謝。
エアリスはルタリスを詮索するのをやめ、彼女にぴたりと寄り添った。

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