7番目の幻想

□華やかで暗い場所
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5人が向かう北東からは断続的に銃声が響いていた。しかしその銃声はバレットの銃のものではない。違いはわずかだが、これは確実に違う音だ。

岩とガレキの間を通り抜けたルタリスは、ようやくクラウド達を発見した。しかし、やはり穏やかではない。バレットが左腕が銃の男と対峙していた。
まだ誰もルタリス達には気づいていないようだ。

「何? 急に止まっちゃって」
「ユフィ、静かに」

ルタリスは口の前に指を立てる。そして微かに聞こえてくる会話に耳を澄ました。


「エレノアが1人で寂しがってる。マリンも連れて行ってやらないとな」
「ダイン…正気か!?」
「マリンだって母さんに会いたがってるだろ?」

突然の銃声。男がバレットに向かって銃を乱射しているようだった。

「バレット!」
「クラウド、手を出すな! これは、俺の問題だ!!」

戦い始めてしまったバレットを前に戸惑うクラウドとティファ。ルタリスは思わず声をかけた。

「クラウド、ティファ! 退け! 1人で、やらせてやれ」
「「ルタリス!?」」

2人はルタリスのもとへ駆け寄ってきた。その後ろをぴょんぴょんと追いかけてくる、デブモーグリに乗ったケット・シーは…今は考えないでおこう。

「ルタリス、なぜここに?」
「おまえ達を追ってきたに決まってるだろう?」

ルタリスはクラウドにそう言うと、なぜか黙り込んでしまった。ルタリス? と呼びかけるクラウドの横で、エアリスがティファに尋ねる。

「ねぇ、ティファ。あの人が言ってたマリンって、もしかしてあのマリン?」
「そうなの。セブンスヘブンにいたマリンは、あの人…ダインさんの子どもだったの」

ティファはとても悲しげな顔をしていた。エアリスは、そんな悲しそうな顔しないで、とそっと彼女の肩を叩いた。




突然、ルタリスが動いた。彼女はバレットとダインの方に駆けていった。
ルタリスはバレットにさっとケアルをかけて横をすり抜け、苦しげに膝をつくダインの前に立つ。

「ダインさん…あなたは実の親を知らない子どもの気持ちがわかるか?」
「あんた…誰だ」
「私はルタリスだ。神羅のソルジャー・クラス1st、ルタリス」

ダインは驚いたように顔を上げた。そしてゆっくりと立ち上がる。

「ルタリス…だと? 5年前に、死んだのでは…?」
「私はここにいる。死んでない」

ルタリスは真っ直ぐダインを見上げる。
視線がぶつかった。
彼はすっと目を細める。

「…不思議な瞳の輝きだな。まるで…命そのものだ…」

突然ダインが小さく呟いた言葉に、ルタリスは首を傾げる。彼はふっ、と笑みを浮かべ、バレットに呼びかけて何かを投げた。

「そのペンダントを…マリンに…エレノアの…女房の…形見だ…」

ダインはバレットが頷くのを見ると、ルタリスに視線を戻した。

「マリンにとって…父親はバレットだ…。実の親だろうが、そうでなかろうが…自分の親が誰なのかは、子ども自身が…決めればいい…」

ルタリスは彼の言葉を聞くと、ゆっくり跪いた。もう引き止めはしない、と無言で示しているようだった。
ダインは再び小さく笑い、ゆっくりと後ずさる。

「バレット…マリンを……泣かせる…なよ…」
「ダイン…?」

ルタリスはそっと目を閉じた。
自分の横を走り抜ける音。
皆が息を呑む音。
バレットの叫び声。
そして、沈黙。



ルタリスは口を開く。

「ごめん。…出しゃばった」
「ルタリス…あいつに何をした…?」

目の前にバレットの気配を感じ、ゆっくりと立ち上がった。
意外にも、彼の顔にはルタリスを責めるような色は全くなく、むしろ不思議そうな顔をしていた。

「あいつ…笑ってたぞ? 全部吹っ切れたみたいな、清々しい顔だった」
「私…何もしてない…」
「そうなのか…?
でもよ、きっと、あいつも救われたんだろうよ。…ありがとな」

ありがとう。
その言葉をどうすればいいのかわからず、ルタリスは視線をさ迷わせた。私は本当に何もしていないのに……

再び沈黙に包まれたその場を、乾いた熱い風が吹き抜けていった。



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