7番目の幻想

□ジャングルに潜む村
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ルタリスがゴンガガ村に入ってすぐ。エアリスが家の壁に寄りかかって空を眺めているのが見えた。クラウドとティファの姿が見えないが、おそらく情報収集をしているのだろう。

「エアリス」
「あ…お姉ちゃん」

エアリスが見せた笑顔は、どこか弱々しかった。

「どうした? 何かあったのか?」
「うん…」

エアリスは村の奥にある家の方へ目を向ける。至って普通の家だ。

「あの家…ザックスの実家だったの」
「ザックス…おまえの彼氏か」



ザックス・フェア。
ソルジャー・クラス1st。
そして、エアリス初恋の彼氏。
エアリス曰く『お姉ちゃんがザックスを連れてきてくれた』。彼についても何も思い出せていないが、エアリスがそう言うのならそうなのだろう。

ザックスは自分からすると後輩にあたり、実際何度か同じ任務についていたという。「ザックスと始めて会った時、男版ルタリスかと思った」というのはツォンから聞いた話だ。今となっては考えられないが、その当時の自分はずいぶんと活発だったらしく、ザックスも当時の自分にそっくりだったとのこと。



「でね、彼のご両親がいたんだけど…やっぱり、知らなかった…」
「…そうか」

エアリスは目を閉じた。そっと抱き寄せると、まるで幼子のようにすがりついてきた。
こうなるのも仕方がない、とルタリスは彼女の頭を撫でる。


5年前、ザックスはルタリスとセフィロスと共に任務中に殉職したと報じられた。エアリスはそのことをツォンを通じて知ったものの、信じなかった。それからしばらくして、ルタリスがスラムの教会で倒れているのを発見し、ザックスも生きていると確信したのだと言った。
そして数ヶ月前。ルタリスはスラムの教会で声を聴いた。そして、悟った。

――自分にとって大切なものが、また1つ失われた

漠然と、しかし確実にそう感じた。
エアリスもそれを悟ったらしく、2人は花畑の中で涙を流した。
その時ルタリスは、自分が漠然と何かを失うことをひどく恐れていることに気がついた。

私は過去に何か大切なものを失ったことがある?

無意識に握りしめていた4つ羽根のペンダントを見つめ、自問した。しかし、やはり答えは出なかった。



「ご両親には伝えたのか?」
「ううん。今も…待ってるから」
「…そうか。うん、それでいい」

ルタリスはまたエアリスの頭を撫でる。


ザックス・フェア。
絶対にエアリスに会いに来いと書いたのに。あの手紙は彼に届かなかったのだろうか?
…いや、それはない。真面目で忠実なあいつのこと。確実に届けてくれたはずだ。

でも…もう、ザックスに会うことはできないのだ。残念なことに。
そして、それは私が彼のことを思い出す機会も失われてしまったことになる。私の記憶は、自分に関わりのある人の目を見ないと戻らない。

ザックス。私も、もう一度会いたかった……


ルタリスは静かに涙を流すエアリスを抱きしめ、これ以上この子を悲しませまい、と心に誓った。

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