7番目の幻想

□星の声、星の命
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ルタリスが運転するバギーは静かだった。ユフィは相変わらずつらそうで、やはりクラウンが付きっきりになっている。レッド]Vは少しそわそわしているようで、ケット・シーは窓の外を眺めている。
ルタリスも外の景色に意識を向けた。見渡す限りの岩、である。夕日に照らされてオレンジ色に染まり、綺麗だった。

その時だった。パンッ、と前を走るクラウド達のバギーから嫌な音がして、急停止した。ルタリスはブレーキを踏み込む。後ろからうげっと声が聞こえた。ごめん、ユフィ。


「おい、大丈夫か?」
「ああ…俺達はな」
「タイヤがパンクしたのか」
「そうみたいだ」

クラウドはしゃがみこんでタイヤの様子を確認していた。

「こんな所で…参ったな」
「いい考えがある」

いつの間にかバギーから降りていたレッド]Vが皆に声をかける。

「このすぐ近くに私がよく知る村がある。そこに行ってみないか? バギーも直せるだろう」
「そうか…じゃあ、行ってみよう。レッド、案内してくれるか?」
「もちろんだ」
「みんなはここにいてくれ。なるべく早く戻る」
「なぁクラウド…私も行っていいか?」

皆ルタリスを見た。彼女もバギーから降りていて、何かを思案するように腕を組み、目を閉じていた。

「ああ…構わないが、珍しいな。あんたがそんなこと言うなんて」
「何か、不思議なんだ……
ここは不思議な場所だ。すごく興味がある」

ルタリスは腕組みを解くと、微笑んだ。ちらりと見えたレッド]Vがどことなく嬉しそうだったのは気のせいだろうか。

クラウドとルタリスは一旦仲間達と別れ、レッド]Vの案内で村に向かった。


***


「ほら、あの村がそうだ」

険しい道を登って数分ほど。レッド]Vが示す方にオレンジの光に照らされた集落が見えた。
この光は夕日ではない。どうやら大きな炎の光のようだ。映し出された影がゆらゆらと揺らめいている。

「綺麗な所だな」
「そうでしょ!」

ルタリスはそのレッド]Vの言葉に違和感を覚え、彼を見た。彼ははっとした表情を見せる。ルタリスは思わず笑ってしまった。

「レッド、なぜ自分を偽るんだ?」
「い、偽ってなんか!」
「ほら、また」

レッド]Vはうっ、と言葉を詰まらせた。その表情がひどく幼く見えて、ルタリスはまた笑う。

「“レッド]V”。これもおまえの本名じゃないだろう? 宝条が付けたサンプル名だ。違うか?」
「…うぅ、やっぱりルタリスには隠せないか」
「見ていればわかる。違和感だらけだ」
「お、おい。これは何の話だ?」

クラウドが明らかに戸惑った様子で尋ねてきた。そんな彼がおかしくて、ルタリスは声を出して笑ってしまった。

「おまえ、私よりレッドと一緒にいる時間が長かったのに気づかなかったのか? まだまだだな」
「ごめんよ、クラウド。本当のことは全部あの村で話すよ」

レッド]Vはそう言うと、もう待ちきれないとばかりに駆け出した。
ルタリスも呆然とするクラウドの背中を叩き、レッド]Vの後を追った。

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