7番目の幻想

□星の声、星の命
2ページ/4ページ



「ただいま〜! ナナキ、帰りました〜!」
「おお、ナナキ! 無事だったか!」

長い石段を駆け上がると、レッド]Vが門番らしき人にそうあいさつしているのが聞こえた。
そうか、本当はナナキという名前なのか。

「おや? その人達は?」
「ああ、その人達にはほんのちょっとだけ世話になったんだ」

レッド]V…もといナナキはルタリスとクラウドを振り返る。2人は門番に軽く会釈をした。

「でね、この人達の車がすぐ近くでパンクしちゃって。直してあげられないかな?」
「もちろんですよ! よくあるんです、車がパンクして動けなくなってしまうこと。見ての通りこんな岩場ですからね」

その門番は近くにいた人を捕まえると、クラウド達の車がパンクしたことを伝えた。どうやらその人が車を直してくれるらしく、石段を降りて行った。本当に感謝だ。

「ところで、あなた達はこのコスモキャニオンのことはご存知ですか?」
「いや、知らないな」
「では少しだけ話させていただきましょう!
ここには世界中から『星命学』を求める人々が集まってきます。つまり、ここコスモキャニオンは星命学の聖地なのです。ぜひ中で学者達のお話を聞いてみてください!」

ルタリスは集落を見渡す。高い岩場に張りつくように建てられた家。ハシゴで移動するようになっている。
オレンジの光源もあった。大きな焚き火だった。その炎の周りには人が集まっていて、思い思いの時間を過ごしている。

「クラウド、えっと…エリーゼ。オイラと一緒においでよ。すごい人に会わせてあげる!」

すっかり口調が子どもっぽくなったレッド]V…いやナナキは最も高い岩場に続く石段の上から言った。特にやることがない2人は彼に付いていくことにした。


上へ行く途中、ナナキは彼自身のことについて教えてくれた。
このコスモキャニオンは彼の故郷。彼の一族がこの場所を守って暮らしていたが、もうほぼ数がいないらしい。
そしてナナキは自分の父親のことを相当嫌っているようだ。父は見下げたふぬけ野郎だ、と彼は言った。
ルタリスはそれを聞いたとき、無性に悲しくなった。なぜだろうか?
しかもナナキはもともと故郷まで自分達と旅をすると決めていたらしく、彼の旅はここで終わりだという。仕方がないとはいえ、悲しみが2倍だ。



全ての階段とハシゴを上ってたどり着いた建物の中には、ふわふわと宙に浮く緑の大きなマテリアのようなものに乗った老人がいた。見た感じずいぶんと高齢だが、それを感じさせないきびきびとした印象を受けた。

「じっちゃん! ただいま!」
「おお、ナナキ! 帰ったのか!」

ナナキは嬉しそうに老人にすり寄っていく。そしてちょこんと座ると、2人の方を向く。

「クラウド、エリーゼ、この人はブーゲンハーゲン。何でも知ってるすごいじっちゃんさ」
「ホーホーホウ。ナナキがちょっとだけ世話になったようじゃの」

老人…ブーゲンハーゲンはクラウドとルタリスに微笑んだ。そしてルタリスに目を止めると、ふわふわと傍へ来た。

「ほう、あんた、面白いものを持っているな」
「…面白いもの?」
「ほれ、そのペンダント」

彼が指差したのは、ルタリスのお守りでもある4つ羽根のペンダントだった。

「少し見せてもらっても良いかの?」
「はぁ…どうぞ」

ルタリスはペンダントを外し、手渡した。
ブーゲンハーゲンはペンダントの無色透明のマテリア部分を熱心に眺める。マテリアはきらり、と部屋の照明の光を反射して光った。無色透明なのに反射した光は様々な色をしているから、不思議だ。

「ホーホーホウ! これは面白いのう」

彼はルタリスにペンダントを返しながら、言う。

「エリーゼと言ったな? あんた、“星の声”が聞こえないかの?」


次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ