7番目の幻想

□既知と未知
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昼過ぎ。バギーの中。
またルタリスはバギーを運転していた。乗っているメンバーも同じだ。
そう、同じである。
クラウン、ユフィ、ケット・シー、そしてレッド]V改めナナキだ。
ただ、以前とは打って変わって、バギー内はクラウンとナナキの楽しそうな声で賑やかである。


ナナキの旅は故郷コスモキャニオンに着いたことで終わるはずだったが、昨夜ブーゲンハーゲンに連れられて行った場所で何やら色々考えたらしく、「やっぱりオイラも行かせて!」と、出発直前に言ってきたのだ。
ちなみに出発時間は昼だった。昨夜ずいぶんと遅い時間に戻ってきたクラウドとクラウンをちゃんと休ませてあげよう、と判断した結果だ。

一行は、ブーゲンハーゲンに「ワシの知識が必要になったらいつでも歓迎じゃ」と見送られ、コスモキャニオンをあとにしたのだった。


***


川の浅瀬を渡る頃になると周りにはもう全く岩は見当たらず、草原が広がっていた。2台のバギーは草原にわずかに残る車の通った跡を目印に進んで行く。
ルタリスが違和感を覚え始めたのも、この辺りからだった。
何だか、妙にドキドキするのだ。

「なぁ…ケット・シー」
「はい? どないしました?」

ルタリスは助手席のケット・シーを手招きして呼び寄せると、彼の耳に顔を近づけ、囁く。

「この先には何がある?」
「こ、この先ですか?」
「頼む。教えてくれ。何にせよ、そこに向かってるんだから」

ケット・シーは明らかに戸惑っている様子。しかし、それはルタリスが思っていることが正しいと肯定しているようなものだった。

「私の過去に関わっているんだろ?」

彼はビクリと体を震わせた。そして小さくため息をつくと、これまた小さな声で囁く。

「…確かに、今向かってると思われる場所はあなたの過去に深ーく関わっている場所や。
せやけど、今詳しいことを話すのはちょっとやめときましょ? 今あなたに何か変化が起きたらボクらも困るんで…」
「…それもそうだな」

このバギーの中で運転ができるのはルタリスだけである。
またあとで教えてくれ、と言うと、ルタリスは運転に集中した。


***


一行がたどり着いたのは、小さな村だった。円形の広場の真ん中に古い給水塔がある。他に目立った特徴はなさそうに見えた。
しかし、明らかに動揺している仲間が2人。
クラウドとティファだ。

「全部…燃えちゃったはず、だよね…?」
「…そのはずだ」
「そうだよね…。でも、どうして? 私の家もある…」

2人は顔を見合わせると、ルタリスの方を向いた。ルタリスはじっと2人を見つめていた。

「ここがニブルヘイム、か」

2人は、ゆっくりと頷く。



ティファと再会した時、彼女は言っていた。

『このことも覚えてないの? 5年前、セフィロスがニブルヘイムに火を…』

さらに、宝条も同じようなことを言っていた。

『ある村に火を放ったおまえ達は魔晄炉へと向かい、そこで…』

そして、今のティファとクラウドの会話。
これらの言葉と自分の持つ知識。全てを総合すると、こうなる。

5年前、自分とセフィロスが殉職したとされた任務は、ここニブルヘイムで行われた。ここはティファの故郷でもある。クラウドも当時任務に参加していた。
そして、何がきっかけかはわからないが、自分とセフィロスは村に火を放ち、魔晄炉に向かった。放たれた火は村を完全に焼き付くすほどの勢いにまでなった……




「…私は残酷なことをしたんだな」
「ルタリス…」

心配そうにルタリスを呼んだのはクラウンだった。彼女が持つ青の肩掛けバッグの中から見上げている。
ルタリスは小さく微笑むと、彼の頭を撫でた。

「おまえは全部知っているんだよな」
「…はい。何もかも」
「そろそろ…潮時かもな」

クラウンは俯き、黙り込んでしまった。
ルタリスはもう一度彼を撫でると、周りを見渡す。
この家々は1度全て焼けていて、再建されたものだとは思えなかった。それほどまでに完璧だった。

その時。
給水塔の裏からふらりと黒い影が現れた。

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