7番目の幻想
□変わらないもの
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ニブル山を越えた一行は、目の前に現れた山脈を大きくぐるりと迂回して、ようやく次の村にたどり着いた(一部を除く皆はバギーでの移動に慣れてしまっていたため、愚痴が絶えなかった)。何とか陽が落ちる前に着くことができてほっとしたのは、言うまでもない。
この村の名前は『ロケット村』。村から少し離れた所に、錆び付いて傾いたロケットがあるからそう呼ばれている。実に単純明快である。
「やっぱり、気になりますか?」
何となくそわそわしていたルタリスに、クラウンが彼女の青バッグの中から声をかけた。
「ああ…そうだな」
「ここに何かあるのか?」
少し照れたように答えたルタリスに尋ねたのはクラウドだ。
「この村には神羅の宇宙開発…特にあのロケット『神羅26号』に関わってた人が住んでてさ。私の友人もここに住んでるらしいんだ」
「詳しいんだな」
「別の友人が教えてくれたんだ。
ね、早く行こうよ。早くそいつに会ってみたいんだ」
みんな疲れてるのはわかってるけど、と苦笑しつつも、ルタリスは仲間達を急かし村へ入った。
ルタリスは迷わず村の一番奥の家へ向かった。彼女曰く『何となく』。
「ごめんくださーい」
ノックに続けてそう言うと、家の中から応じる女性の声が聞こえた。そしてかちゃりとドアが開き、眼鏡をかけた白衣の女性が出てきた。
彼女は少し目を丸くする。おそらく、この大人数の訪問者に驚いているのだろう。
まぁ、確かに多い。ケット・シーとデブモーグリを1人(?)と数えても、10人(?)もいる……
「ああ…こんな大人数ですみません。
私、シドの友人なんですけど…ここ、彼の家で合ってますか?」
「ええ、合ってますよ。でも今はここにいないんです。
とりあえず中へどうぞ。少し狭いかもしれませんが…」
「え、いいんですか? じゃあ、お言葉に甘えさせてもらいます」
ルタリスは一旦横に捌けて仲間達を先に入れさせた。すぐ友人を探しに出るつもりだからだ。
綺麗な家だった。少し油のにおいがするのは、いつも機械をいじっているからだろう。開け放たれたもう1つのドアからは裏庭が見えた。そしてピンク色の何か大きなものも。
「いいな、飛行機か」
ぽつりと呟いたのはクラウド。じっと、羨ましそうにそれを見ている。
確かに飛行機があればさっきまでのように延々と歩かずにすむだろう。みんなの愚痴でげんなりすることもなくなる。
「もしそれが使いたかったら艇長に聞いてみてください。ロケットにいると思うので」
クラウドの羨望のまなざしに気づいたのか、女性がお茶を勧めながら言った。
「艇長って、シドのこと?」
「はい、そうです」
ルタリスはお茶を受け取りつつ尋ねた。そのままお茶を口に含むと、いい香りが広がる。思わずため息が出た。
「じゃあ、会うついでに聞いてみるよ。みんなはここにいてくれ。疲れてるだろう?」
「待って、私も行く!」
声をあげたのはエアリス。カップに残っていたお茶を飲むと、ごちそうさま、と女性に微笑んだ。
ルタリスはやっぱりな、と小さく苦笑し、ずっとバッグの中から物欲しそうな視線を送っていたクラウンにカップを渡す。
「おまえはどうする?」
「ボクも行きます! シドさんに会ってみたいですし」
クラウンは両手でカップを包み込むように持ってお茶をすすっていた。もう熱くないはずだが、やっぱり猫舌なのか。
「他に来るやつはいるか?」
「じゃあ、俺も行こう」
ルタリスの呼び掛けにクラウドが応えた。机にカップを置いて立ち上がる。
皆にいってらっしゃいと見送られ、4人はロケットを目指した。