7番目の幻想

□変わらないもの
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先にシドの家へ戻ってきたクラウドとエアリスは、仲間達と共に話の成り行きで白衣の女性―シエラの話を聞いていた。


「……艇長がどう思おうと、私はあの人に償わなくてはならないんです」
「そんなことが…」

ぽつりとエアリスが呟き、その場は静まり返ってしまった。シエラが申し訳なさそうに微笑む。

「ごめんなさい、せっかく来てくださったのにこんな話をして」
「いや、気にしないでくれ」

クラウドが首を横に振った、その時。
バンッと大きな音を立ててドアが開いた。そこにいたのはこの家の主シドである。

「おい、シエラ! まだ神羅の若社長は来てねぇだろうな!?」
「え、ええ。まだです」
「おう、そうか。だとよルタリス。まだ大丈夫みてぇだ」
「そ、そっか。ああ…焦った」

ルタリスはドアの前のシドをよけてするりと家の中へ入ってきた。しきりに何かを気にするようにきょろきょろしている。
クラウドはふと首を傾げた。

「今、若社長って言ったか?」
「そ、そうなんだよ! ルーファウスがここに来るんだよ!!」

クラウドの言葉を聞くな否や、ルタリスは彼に掴みかかりそうな勢いで言った。ぎゅっと左手を握りしめている。

「だ、だからちょっとここで匿ってもらおうと思って。まだ見つかって連れ戻されたくないから。だから…」

早口で喋っていた彼女は、突然はっとしたように黙り込んでしまった。一瞬、沈黙が広がる。

「お姉ちゃん?」
「シッ。静かに」

エアリスの言葉を遮り、何かに集中するように目を閉じる。

「やばい、来た…!」
「ああ!? もうかよ!? んじゃおめぇは隣の部屋にでも隠れてろ!」

ルタリスは返事をする間もなくシドに隣の部屋に押し込まれてしまった。部屋のドアが閉じるのとほぼ同時に、玄関のドアが開く音がする。

「うひょ! 久しぶり! シドちゃん、元気してた?」
「なんだふとっちょパルマーじゃねぇか!」

パルマーかよ…と心の中で呟き、ルタリスはドアを背にして座り込んだ。


パルマーは一応宇宙開発部門統括だから、この村に来るのは別におかしくはない。
でもルーファウスは? 彼はどうして来た?
スパイのケット・シーが自分の居場所を報告した可能性は…あまりないだろう。それができるならもうとっくにやっているはず。
さっき、ロケットの中でシドはルーファウスが宇宙開発を再開するのではと期待している…と言おうとしていた。でも、その可能性もあまりないだろう。無駄に金を使いたがらないあのルーファウスが、凍結されたも同然な宇宙開発を再開するとは思えない。



1人で悶々としていたら、トントンと強めにドアがノックされた。

「あの、ルタリスさん…!」
「シエラさん?」
「皆さんを乗せたタイニー・ブロンコが…!」

ルタリスは焦ったシエラの口調で状況を察した。感謝の意を込めて強く頷くと、部屋を飛び出した。


裏庭に出ると、タイニー・ブロンコはすでに少し浮かび上がっていた。そして厄介なヤツ…ルーファウスと目が合ってしまった。もう最悪だ。

「ルタリス、飛べ!」

そんな時、上から聞こえた声。
ヴィンセントだ。ヴィンセントが手を差し伸べてくれている。

ルタリスは思いっきり地面を蹴った。ふわりと舞い上がった体はヴィンセントの腕の中に収まる。

背中に痛いほど視線を感じる。
今度会ったら色んな意味で殺されそうだ。ごめん、ルーファウス。



「シィィーット!! 尾翼がやられちまってるじゃねぇか!」

シドの声に振り返れば確かに黒煙が。…そういえばさっき銃声が聞こえたような気がする。

「不時着か!?」
「「「えぇーっ!?」」」
「さぁでっけぇ衝撃が来るぜ! チビらねぇようにパンツしっかり押さえてな!!」
「ルタリス! 何とかならないですかっ!?」
「や、やってみる! でも期待するな!」
「「「ええぇーっ!?」」」


***


すっかり日が暮れようとしていた。何も遮るものがない海の上は、さすがに寒い。

「まさか飛行機相手にグラビテを使う日が来るとはな…」
「だが、おかげで助かった」
「いいって。でも、これからどうするんだ?」
「じゃ、西に行くってのどう? 理由なんて全然ないけどね。もう、ぜんぜ…うぇ…」

船(?)酔いで完全ダウンしたユフィの言葉は怪しすぎるものの、結局西へ向かうことにした。完全に暗くなる前に陸へたどり着きたいというのが皆の本音である。

成り行きで付いてくることになったシドを加えた一行は、船と化した飛行機を走らせた。




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