7番目の幻想
□一難去って…
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「みんな、ごめんっ! ほんっと油断してた!」
朝。
波打ち際のタイニー・ブロンコの近くでは、仲間達に頭を下げるルタリスの姿が。
「ルタリスは何も悪くない。無防備だった俺達がいけないんだ」
ルタリスはクラウドの言葉にもう一度頭を下げると、盛大にため息をついた。
あのおてんば娘ユフィが、皆が起き出す前にほぼ全てのマテリアを盗んで逃げたのである。ただしルタリスとクラウンのものを除いて。さすがにこの2人のは盗めなかったのだろう。
「で、でねクラウド。私もユフィ捜索に協力したいところなんだけど、ここ、たぶんウータイなんだよね。だから、私はちょっと下手に動かない方がいいかなって思うんだけど…」
「ああ…そうか」
約6年前に終決したウータイ戦争で、ルタリスとセフィロスが恐ろしいほどの強さを発揮し、英雄と呼ばれるようになったのは非常に有名な話である。ウータイ市街地にまだルタリスに恨みを持つ者がいてもおかしくはないだろう。
結局リーダーのクラウドと、何としてでもユフィを捕まえると息巻くバレット、鼻の利くナナキ、そしてマテリアを持つクラウンでユフィを探しに行くことになった。
「じゃあ、私達は街で情報収集をするね」
「ああ、ティファ頼むよ」
昨日タイニー・ブロンコの上で、神羅はセフィロスを追って『古代種の神殿』とやらに行くらしい、とシドが言っていた。その『古代種の神殿』についての情報も欲しい。
「お姉ちゃんはどうするの?」
クラウド達を見送った後、エアリスがルタリスに尋ねた。
「動かない方がいいとは言ったけど、じっとしてるのも性に合わないからね。私は街の周辺でも探索してるよ」
ユフィが街の中ではなく外に隠れている可能性も捨てきれない。
「では私も行こう」
ひらりと赤いマントをはためかせ、ヴィンセントが言った。正直、意外である。残った他のメンバーもきっと同じように思っているだろう。
「ヴィンセントも?」
「1人だと何かあった時に困るからな」
「もしかして、心配してくれてる?」
彼から返事はなかったものの、きっとそうなのだろう。素直じゃないなぁ、と思い、ルタリスは小さく笑った。
その時、もう1つ声が挙がった。
「ボクも行かせてーな! 頼んますー!」
デブモーグリの上で手を高く挙げるケット・シー。ルタリスはわざと少し眉をひそめた。
「ケット・シーも?」
「ダ、ダメですか?」
「ま、全然いいけどね。
じゃあ、行こうか」
くつくつといたずらっぽく笑い、ルタリスは情報収集は任せた、と言い残して街の方を目指した。
(なぁ…ルタリスってよ、ヴィンセントに気があるのか?)
(え?)
(だってよ、さっきのあの態度の違い…)
(うーん……エアリスはどう思う?)
(んー、あながち間違ってないかも!)
(え!?)