7番目の幻想

□一難去って…
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ルタリス、ヴィンセント、ケット・シーの3人はウータイの街の裏側にある巨像へとやって来ていた。「ダチャオ像」と呼ばれるこの像は、ウータイの人々の信仰の対象でもある。
そして、この像の内側は複雑な構造になっている、という話を聞いたことがあったため、わざわざ街を迂回してまでやって来たのだ。

ユフィが隠れているかもしれないと思ったわけだが……


「…なんでコルネオがいるんだよ」

走りながらぽつりとルタリスが呟く。

像の内部を探索していたら、コルネオがその体格に似合わずけっこうな速さで走っているのを見かけたのだ。
しかもユフィを担ぎ上げて。まったく、信じられない。

あの変態に関わったらロクなことにならないと身に染みて知っているため、ヤツを追っているのだ。




無駄な音を立てないように進んでいると、威勢の良い喚き声が聞こえた。ルタリスは足を止め、額に手をあてる。

「なんでイリーナが…」

今日は「なんで」ばかり言っている気がする。ため息しか出てこない。「私にこんなことして…」とか叫んでいるということは、イリーナもユフィと同様にコルネオに捕まったに違いない。

「知り合いか?」
「うん。彼女には世話になったことがあってさ…」

ルタリスがヴィンセントの問いにうんざり顔で答えた、その時。

「やっ、やめなさい! 触んないでっ!!」

イリーナの悲鳴に近い叫び声が挙がった。

考えるより先に、体が動いていた。




「貴様…相当死にたいと見える」
「お、おまえは…!!」

背後から首元に突き付けられた冷たい刃と、その刃以上に冷たく抑揚のない声は、ヤツにとっては思い出したくもないもののはず。

「ルタリスさん…!!」

うるうると潤んだ目でイリーナがこちらを見ていた。ルタリスは彼女を安心させるように微笑む。が、すぐにその笑みを消す。

「彼女から離れろ。でないと……
首が飛ぶぞ」

刀を少しコルネオの首に押し付けると、ヤツはヒッと小さく声を挙げた。そのまま少しずつイリーナから離れていく。

「ラ、ラプス カムヒア!!」

ルタリスがコルネオを崖まで追い詰めた時、ヤツが叫んだ。同時に聞こえてくる、何かが羽ばたく音。
ルタリスは口元に小さく笑みを浮かべる。

「甘いッ!!」

振り返りもせずにエアロガを放った。続けて聞こえる銃声。ヴィンセントが加勢してくれたようだ。
ゆっくり振り返ると、翼を持った赤いモンスターが風の渦に翻弄されているのが目に飛び込んでくる。

ルタリスは2つの刀を構え、地面を蹴った。ふわりと跳躍し、刀をモンスターに降り下ろす。耳障りな悲鳴を挙げたモンスターを蹴って方向を変え、コルネオの真横に降り立った。
この間、僅か一瞬である。
ヤツは再び目の前に現れた刃に腰を抜かしたのか、その場にへたり込んだ。

「おー、さすがだなルタリス。見事だぞ、と」

突如聞こえた声の方に目をやれば、そこにはパチパチと拍手をする赤髪と無口のスキンヘッド―レノとルード。

「そのエモノは俺達に任せろ、と」
「ああ。煮るなり焼くなり好きにしろ」

ルタリスはレノに今いた場所を譲ると、真っ先にイリーナのもとへ行き、その縄を解いた。
イリーナの隣にはユフィがいるが、マテリアを盗んだ罰としてもうしばらくそのままにしておこう。当の彼女は始終呆気に取られていたらしく、開いた口が未だに塞がっていない。

「イリーナ、大丈夫か?」
「ルタリスさん…ありがとうございます。もう…ほんとにダメかと思いました…!」

イリーナが急にルタリスに抱きついた。ルタリスは突然のことに驚き、バランスを崩して座り込んでしまった。

「わ、こらイリーナ!」
「えへへ、ルタリスさんが同性でよかったです! もし異性だったら、もう絶対に惚れちゃってます!」

屈託なく笑うイリーナに、ルタリスも笑うしかない。

「それは光栄だね。ツォンと良い勝負かな?」
「あー、えーっと、それは…」
「悩むのかよ」
「…おーい、そこのお二人さん」

レノが呆れ返った顔でこちらを見ていた。コルネオの姿がどこにもなかったが、あいつがどうなろうと興味ない。
彼の指差す方を見ると、いつの間にそこにいたのかクラウド達もぽかんとした表情をしていた。

ルタリスはクラウド達4人―特にバレット―に変な誤解をしないでくれ、と半ばムキになって今までの経緯を話したのだった。

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