7番目の幻想

□願い、そして不穏
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ゴロゴロと響く雷 。どこからか聞こえてくる悲鳴と叫び声。おどろおどろしい雰囲気に包まれた洋館。

実によくできている、とルタリスは1人感心したように頷いていた。


『古代種の神殿』は南の方にあるらしいとか、その神殿に入るには『キーストーン』が必要らしいとかいう情報を掴み、まずはとりあえずキーストーンを探して各地を転々とした。そして、たまたま見つけた一軒家の武器職人から、キーストーンはゴールドソーサーの園長に売ってしまったと聞き、ゴールドソーサーへとやって来た。
確かにキーストーンはあった。それを手に入れるためにクラウドが園長の要求を飲んで闘技場へ。苦戦しつつも園長を満足させ、キーストーンをゲット。しかしロープウェイが故障。次の日の朝までゴールドソーサーにカンヅメ。

ドタバタドタバタ、本っ当に目まぐるしい。
しかもケット・シーがコネで取ってくれたホテルはオバケ屋敷ときた。
まぁ、文句は言えない。タダなんだから。



「それだけじゃない、きっと。他にも探してるものがある」

エアリスが首を横に振っているのが見えた。少しぼーっとしている間に、ずいぶんと話は進んだらしい。

「黒マテリア…だな」

クラウドが呟く。
ルタリスは黒マテリア、と心の中で繰り返した。


黒マテリア。非常に気になる。
前回ここに来た時、ここの園長が『黒マントの少年が黒マテリアを探している』と言っていたと聞いている。黒マントが絡んでくるということは、セフィロスも絡んでくるということだ。
…もしかしたら、彼の妹である自分も。

それに、その色も気になる。
黒と対になる色は白だ。だとしたら、黒マテリアと対になる“白マテリア”なるものが存在するのではないか?
…エアリスが持っている、実母の形見のマテリアの色は白だ。濃霧のような、掴み所のない深い白色だ。
古代種セトラの最後の純血だったというエアリスの母が持っていたマテリア。これは十分に可能性があるのではないか…?



ふと、皆の視線が自分に集まっているのを感じた。

「ルタリス?」
「あ、ごめんティファ。ぼーっとしてた。何の話?」
「黒マントの人達のことよ。ルタリス…何かわかる?」

黒マント。
ニブルヘイムでの不可解な出来事が甦り、思わず眉間にしわが寄る。そんな自分を見て、ティファは申し訳なさそうな顔をする。

「ごめんねルタリス…嫌だよね」
「いや、大丈夫だ。気にするな。
でさ…黒マントって、みんなイレズミを入れてたか?」

ルタリスの問いに、ティファだけでなくほとんどの仲間達も頷いていた。

…なるほどな。

「じゃあ、宝条の実験台じゃないか? あいつはサンプルには大抵、個体識別用のイレズミを入れるんだ。
ナナキ。おまえもそうだろう?」
「あ、うん…]Vのイレズミを…」

ナナキは不安げな目をしていた。自分も黒マントの人達ようにおかしくなってしまうのではないか、と思っているのだろう。
ルタリスは彼を安心させるように微笑んだ。

「おまえと黒マントは何の関係もないさ。だって…」

ナナキの前にしゃがみこみ、彼の目を覗き込む。戸惑いと不安を滲ませた瞳がルタリスを写す。

「おまえをどんなに見つめても、私はおかしくならないからな」

くしゃくしゃとナナキの頭を撫でて、立ち上がった。

「ごめん、先に部屋行ってるよ」

再び皆の視線を感じながら階段を上がり、ルタリスは思う。

おそらく、みんなは黒マントの話が出たせいで私がこんなことを言ったと思うだろう。
ああ、そうだ。そう誤解しといてくれ。
本当は全く関係ない全然別のことを企んでるなんて絶対に気付かれたくないからな……


***


「お姉ちゃん…だいじょぶ?」

ルタリスが部屋に入ってそれほど経たないうちに、同室の常連エアリスが心配そうに尋ねてきた。
大丈夫、と微笑み、そして稲妻が走る空を見て、呟く。

「なぁ、エアリス…今、チャンスだと思わないか?」
「チャンス?」
「ああ。誰かと2人っきりで話す、いいチャンスだと思わないか?」

誰か…とエアリスが呟くのを見て、ルタリスは小さく頷いた。

「エアリス。デートしよっか。ダブルデート」
「ダブル…?」
「ああ。おまえはクラウドを誘ってこい。何か気になることがあるんだろ? 私はヴィンセントを誘ってくる」

エアリスは少し悩む素振りを見せたが、大きく頷くと部屋を飛び出していった。


――私はわかってるんだぞ
――おまえがクラウドを見る時、おまえはザックスのことを話す時と同じ目をしてるってことくらいな……



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