15番目の幻想

□傍にいる Noctis
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休み時間。
プロンプトと他愛もない話をしていたノクトは不意に立ち上がった。
「ノクト?どしたの?」
「ああ…ちょっとな」
ノクトは教室の前の方、ステラの席へ向かう。
彼女は机に突っ伏して眠っているようだった。
「ステラ?大丈夫か?」
軽く揺すりながら声をかけると、ステラはすぐに目を覚ました。
「ん…ノクト…?あれ、今、私寝てた?」
「ああ、思いっきり寝てたぞ。調子悪いとかないよな?」
「うん、大丈夫」
「ならいいけど。あんまり無理すんなよ」
「わかった。心配してくれてありがとね」
「ああ」
それだけ話すとノクトは席に戻る。
「何で起こしちゃったの?そっとしておいてあげればいいのに」
「実はあいつ、ああ見えて身体弱いんだ。突然何の前触れもなくぶっ倒れることがよくあるくらいでさ。だから、ただ寝てるだけでも気絶してんじゃないかって心配になるんだ」
「え、そうなんだ…そうは見えないけどなぁ」
「だろ?」
それからノクトとプロンプトはチャイムが鳴るまでステラの話で盛り上がった。


「ステラさん?聞いていますか?」
「…もちろん聞いています」
教師から注意されたものの、ステラは窓の外から視線を戻さない。
「何か…ひどく胸騒ぎがするんです」
「胸騒ぎ…ですか」
ステラが頷いた時、スマホが振動する音が小さく聞こえた。
彼女の顔色が変わる。
「すみません、一旦席を外します」
ステラが教室を飛ぶように出ていった後、生徒達は一斉に騒ぎ始めた。
学校では、家族との緊急連絡用にスマホを使うことが許されている。
ステラのスマホが鳴るということは、彼女の家族もしくは王家に何かあったということだ。
ステラが王子であるノクトと王家との連絡役を務めていることは、誰もが知ることである。
教師が静かに!と声を大きくする中、ノクトは1人不安そうにステラの去った席を見つめていた。


数分後、ステラは慌ただしく教室へと戻って来た。
「先生…私帰ります。急用が入りました」
さっとノクトに視線を向けたステラの顔は、血の気が引いて青ざめていた。
「ノクトも…」
がたん、と大きな音を立ててノクトは立ち上がる。
「親父に、何かあったのか…?」
ステラはノクトの問いに答えなかった。
ステラのただならぬ雰囲気とノクトの一言に、教室はさらにざわめき出す。
「すぐに帰る準備して。母さんが迎えに来てくれるから」
ステラはノクトの席の傍に来ると、そう呟いた。
彼女の口調は淡々としていたが、その言葉は微かに震えていた。


ステラの母アウラが学校に迎えに来た時、ノクトは車にイグニスもいることに気づき、彼に詰め寄った。
「何があったんだよ?なぁ答えろよ…!」
「すまない、オレも詳しいことはわかっていないんだ」
「親父が倒れたってことしか聞いてないのかよ!」
「ああ…」
イグニスは小さなため息と共に答える。
「ノクト、落ち着いて。とりあえず乗りなよ」
先に車に乗り込んだステラがノクトに声をかける。
ノクトは何でそんなに落ち着いていられるんだ、とステラにも食ってかかろうとした。
しかし彼女の潤んだ紫の瞳を見て、彼はその言葉を失った。
「王子、そんなに心配しないで。陛下は最近お忙しかったから、そのつけが回ってきたんじゃないかってマーラが言ってたわ」
「つけ?」
「ええ」
アウラの言葉に、ノクトは多少落ち着きを取り戻したのか、素直にステラの隣に座った。

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