15番目の幻想

□傍にいる Noctis
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「ああ…やっと来たわね」
マーラは小走りでやって来る4人を見て小さく微笑む。
「マーラ!親父は!?」
「ノクト、そう焦らないで。レギスは大丈夫よ」
ノクトの顔に安堵が浮かぶのを見て、マーラはまた微笑んだ。
「マーラ…私は何をすればいい?」
「ええ、ステラは私と一緒に来て。ノクト、イグニス。あなた達はここで少し待ってて。また呼びに来るわ」
マーラはそう言うと、一瞬アウラと目を合わせて頷き合い、ステラを連れて王の部屋に入っていった。
「じゃあ、私はこれで」
「ああ、母さん、ありがとう」
「いいのよ。私は私にできることをしただけだもの」
アウラは微笑みながらイグニスの肩を軽く叩くと、ノクトに向き直る。
「王子も、あまり取り乱しちゃ駄目よ。あなたをすぐ傍で支えてくれる人はたくさんいるんだから」
「はい…覚えときます」
じゃあね、と軽く手を振ると、アウラは執務室に戻って行った。


十数分後、ノクトとイグニスがマーラに呼ばれて王の部屋に入ると、ステラがベッドから身体を起こしているレギスと話しているのが見えた。
2人の近くに立っている男性―ステラとイグニスの父ラディウスがレギスに声をかける。
そしてステラにも声をかけると、2人はレギスの傍をそっと離れ、ドアに向かう。
「ノクト、行きましょう」
「あ、ああ…」
すれ違い様にラディウスとマーラは一瞬目を合わせ、頷き合った。
ドアの近くにスキエンティア親子が集まる形になる。
「ステラ、イグニス」
ラディウスは2人の名前を呼ぶと、それぞれの肩に手を置いた。
「おまえ達は次期国王のノクティスを支える立場にある…という話はいつもしているからしない」
「…してるじゃん」
ラディウスは小さく呟いたステラの頭を軽く小突き、ふっと笑みをこぼしたが、すぐに真剣な顔になる。
「だが、今回のようなことがまたないとも限らない。むしろ増えるかもしれない。そして…最悪の場合も考えておいてくれ」
「「…はい」」
ステラとイグニスは全く同じタイミングで返事をした。
ラディウスはそんな2人の様子を見て今度ははっきりと笑うと、2人の肩に置いていた手を頭に移し、そのままくしゃっと撫でた。
「ちょっ、父さん!子ども扱いはなしー!」
ステラが少し不服そうに口を尖らせる。
イグニスは驚いて困ったような照れたような、色々な感情が混ざったような表情を浮かべていた。
「おまえ達はまだ子どもだろう?13と17だからな。歳の割に落ち着きすぎているだけだ」
「でも、そうなるようにしたのはどこの誰ですか」
イグニスが少し笑いながら皮肉っぽく言った。
「ああ…間違いなくオレだな」
ラディウスもわざとらしく眉をひそめる。
が、すぐに吹き出して笑い始めた。
ステラとイグニスも釣られて笑い出す。
「兄さん普段とのギャップありすぎー!」
あーもうお腹痛い、とステラは目の端に浮かんだ涙を拭う。
「そうか?でもおまえ、少し笑いすぎじゃないか?」
「もうっ!誰のせいよ!」
「間違いなくオレだな」
2人は顔を見合わせ、また吹き出した。
ラディウスは年相応に笑う子ども達を見て、満足そうに微笑む。
2人の笑いが収まってきたところで声をかけた。
「2人とも、たまには思いっきり笑いなさい。おまえ達をすぐ傍で支えてくれる人はたくさんいるんだから、おまえ達が全てを抱え込む必要はないんだ」
2人は父親の言葉に素直に頷いた。
が、すぐにくすくすと笑い出す。
「…そこ、笑うところじゃないだろ」
「いや、だって父さん、母さんと全く同じこと言うんだもの!」
「そう、なのか?」
「一字一句、違わなかったな。ステラ?」
「うん!」
ラディウスはもう一度そうなのかと呟くと小さく苦笑いをする。
「…だがおまえ達は本当に仲が良いな」
「唐突に何さー?」
「いや、本当に唐突に思っただけだ。…だが少しは兄離れ妹離れしたらどうだ?」
「でも以前ステラとノクトを頼む、と言ったのは父さんですよね」
「まぁ…そうだが」
「いいの!兄妹はなんだかんだで依存し合うものだから!」
「おいイグニス、頷くなよ…」
「いえ、だって事実ですから」
3人はまた笑い出した。



(…あいつら、何笑ってんの)
(あの2人をあんなに笑わせるとは…やはりラディウスは強者だな)
(ええ、そうね。流石は親子。何か羨ましいわ)

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