15番目の幻想

□down Gladiolus,Ignis
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ステラは大きなため息をついた。
ここ数日、彼女はずっとこんな感じである。
同じ部屋で読書をしていたグラディオが見かねて声をかける。
「そんなに心配か?」
「そりゃ当たり前でしょー?3人同時に風邪引くなんて、今までになかったし…」
「まぁ…仕方ないだろ。こんな長旅は全員初めてだからな」
「それもそうだけど…」
ステラはまたため息をつくと、机の上のコーヒーに手を伸ばした。
「ステラが鬱になりそうだな。無理だけはすんなよ。おまえまで倒れられたらやってけねぇからな」
「…何かごめんね?余計な心配させちゃって」
ステラが苦笑してグラディオを見ると、照れ隠しなのか彼は本で顔を隠すようにして読書を再開した。

しばらく2人で話をしたり荷物の整理をしたりして暇をつぶしていると、2人のスマホが同時に鳴った。
「あ、プロンプトから」
彼からのメッセージは『ステラー、ちょっと来てー』。
何だろうと思いつつスマホの画面を閉じようとした時、新しいメッセージが表示された。
それはグラディオからで『用件は?』。
すぐに『ステラじゃないと駄目なことか?』と続く。
『ダメじゃないことはないけど…』
『じゃオレが行く』
『何でそうなるのー!?』
ステラは画面から目を離して、グラディオを見た。
彼はステラの視線に気づくと、小さく笑って画面をタップする。
『ステラが風邪移されて発作でも起こしたら困る』
『ちゃんとした理由だろ?』
『別にやましいこと考えてるわけじゃないぜ?』
ステラはグラディオが自分のことをどれだけ心配してくれているのかを画面越しに感じ、内心感謝した。
プロンプトからも少し遅れて『確かにそうだね』と返信が来る。
『てかやましいことって何さー!?』
「お、やっぱ食いついたか」
グラディオは面白そうに笑った。
「そういう言葉が出てくるってことは、少なからずそういう何かを考えてたってことだよね?」
「ん、別に何も?強いて言うんならちょっと頭撫でたいなーくらいじゃね?」
「頭撫でるって…別にやましくも何ともないじゃん。てか私、グラディオに撫でられるの嫌いじゃないし」
「…おまえ、誘ってんのか?」
「あー…誘ってないです。つい本音が出ちゃ、っ!?」
ステラは突然グラディオにぐっと引き寄せられ、唇にそっと触れるだけのキスをされた。
あまりにも急な出来事に驚き、頬を紅潮させる。
「ゆっ…油断したわ…」
至近距離で赤い顔のステラと目が合い、グラディオはにやりとする。
「今の言葉はちっと無防備すぎだぞ?百戦錬磨のステラ様が珍しい」
「なっ、何が百戦錬磨だ!それはグラディオのことでしょうが!」
「そうかもな」
「かもじゃない!てか早く行って!感づかれちゃうから!あとであれこれと探られるのはごめんだからね!」
ステラが小声かつ早口で言うと、グラディオはようやく彼女を解放し、いつもやっているように手をぽんと彼女の頭に置いた。
そしてそのままくしゃりと撫でると、何だかんだでステラは嬉しそうな顔をする。
「それもそうだな。じゃ、名残惜しいがちょっと行ってくるわ」
「はいはい、いってらっしゃい」
ステラが適当にあしらった時、彼女のスマホが鳴った。
「あれ?兄さんからお呼びがかかった」
「イグニスから?珍しいな。あいつもさっきのやり取りを見てるだろうし…それでも来いって言うんならそれなりに切羽詰まってんじゃねぇか?行ってやれよ」
「ん…そうだね。そうする」
「あ、さっきのことは言うなよ」
「無理。絶対にバレる。兄さんに隠し事はできない」
きっぱりと言い切ったステラに、グラディオは相変わらずだなと苦笑した。

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