15番目の幻想

□down Gladiolus,Ignis
2ページ/2ページ


ステラはグラディオが向かった部屋とは別の部屋に向かった。
そして扉を軽くノックする。
「…入るよ?」
少し疲れたような返事が聞こえて、心配になる。
部屋に入ると、イグニスはベッドから身体を起こしてステラを待っていた。
「寝てていいのに…ってか寝てなきゃダメ」
ステラはベッドの端に座ると兄の肩を軽く押した。
「ああ…すまない」
「なんで謝るのさ」
イグニスがだるそうに横になるのを見て、ステラは心配そうに目を細める。
「さっきのやり取り、見てたでしょう?」
「…ああ」
「用件は?」
不意にステラはいたずらっぽく笑った。
「…わかっているのなら聞くな」
「はいはい、ごめんね」
少しだけ不機嫌そうに言った兄に、今度は半分吹き出すようにして笑う。
「でもさ、昔から変わらないよね。私も兄さんも」
「…互いに依存し合う、という話のことか?」
「そう。私はいつも兄さんにベッタリだけど、兄さんだって何だかんだで私を頼る」
「…嫌か?」
「まさか!むしろ嬉しいよ。私はずっと兄さんに助けられてきた。だから恩返しみたいなものだよ。私にとって兄さんの癒しもとい力になることはね」
ステラは微笑みながらイグニスを見る。
「兄さん、さっきより顔赤い」
「…誰のせいだ」
「はい、間違いなく私です」
ステラとイグニスは互いを見て、ふっと笑った。
「そういえば、おまえも少し顔が赤いな。何かあったのか?」
「…あれ、眼鏡かけてないのにわかるんだ」
「ごまかすな。おまえはオレを何だと思っているんだ」
「…ごめん」
兄の目にほんの少しだけ意地の悪い光が浮かんでいるのに気づき、ステラは少しぞっとした。

――ごめんグラディオ、やっぱ無理だわ
――兄さんには敵わないや

ステラはやはりというべきか、先ほどの出来事を洗いざらい話すはめになった。


その後2人はしばらくの間、何か特別なことをすることもなく思い思いに過ごした。
「…じゃあ、そろそろ戻るかな。グラディオに文句言われそうだし…」
「ステラ」
ステラが立ち上がろうとした時、イグニスは彼女の手首を掴む。
「ん、何?」
ステラは優しく微笑む。
「…もう少し、ここにいてくれ」
「了解。そう来ると思った」
ステラは笑いながら言うと、イグニスの頬に軽くキスをした。
そしていたずらっぽく笑う。
「女神のキス、だよ」
「ああ…これが何よりも効く気がする」
「またまたー!でも私の力は伊達じゃないからね」
2人はまた小さく笑い合う。
「兄さんが寝るまでここにいるよ」
「…いつも悪いな」
「いえいえ、とんでもない!むしろ頼ってくれて嬉しい限りです」


ステラがなかなか戻ってこないことを不思議に思ったグラディオがイグニスの部屋に行ってみると、2人は寄り添って眠っていて、彼を大いに呆れさせたとか。





(あん時の2人は恐ろしく幼く見えたっけな)
(幼いイグニスとステラ…?)
(うわーなにそれ!見てみたかったなー!)
(見なくていい…)
(いや、むしろ見ないで…)

前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ