ニョルド

□Artificial Love
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「Artificial Love」

#EXOで妄想
#ニョルド
#セフド



「チャニョル君って、仕事ができて感じも良いし、おまけにイケメンで、完璧だよね〜。」

「本当!彼女居ないのかな?」


昼休み。

僕は溜まった仕事をこなす為にパソコンに向かいながら、向かいのデスクの女子社員が黄色い声で噂話をするのをぼんやり聞いていた。

彼女達は、チャニョルの本当の姿を知ったらどんな顔をするんだろう?

僕が1人で苦笑いを浮かべていると、ブーブーとスマホが震えた。

メッセージの相手は見なくても誰かなんて分かる。

僕はため息をついて、仕事をしているフリを止めた。

どうせ僕の行動なんて、あいつにはお見通しなんだから。

「…休憩入ります。」

そう言って、僕は重い足取りを悟られない様に席を立った。




「…遅かったじゃん。」

人気の無い小会議室のドアを開けると、普段見せる爽やかさなんて一欠片も無い、まるで別の人間の様なニヒルな笑いを浮かべた男─パク・チャニョルが居た。

「…お互い仕事中だろ。それに、僕はお前と約束なんかしてない。」

僕は震える手を悟られまいと、ギュッと握った。

それを知ってか知らずか、この男は面白そうに僕の様子を伺っている。

こんな憎たらしい笑顔を浮かべていても、チャニョルは女子社員が騒ぐだけあってとてもカッコいい。

「ふーん。随分と強気だけどいいんだ?後輩君との関係バラしちゃってもいいけど。」

ビクリと僕が肩を震わすと、チャニョルは乱暴に僕を壁に押し付けた。

痛みに思わず顔が歪んだけど、それでも僕はチャニョルに抗えない。

「…セフナとのことは、お願いだから誰にも言わないで…。」

そう、僕はチャニョルに秘密を握られているのだ。

それは一月前のことだった。

同じ社内の後輩で、僕の恋人であるセフナに僕がキスされている所を、たまたまチャニョルに目撃されてしまった。

それからというものの、こうしてチャニョルは時々僕を呼び出す様になった。

壁に押し付けたままチャニョルは、表情の無い暗い目でしばらく僕を見つめたかと思うと、急に右手で僕の顎を上げた。

「…だから?」

僕はセフナを守る為に、屈辱に耐えてこう言うしかない。

「だから、チャニョルの言うことは何でも聞くから…。」

そう言うと、チャニョルは噛み付く様に僕の唇を奪った。

「んんっ…。」

セフナという恋人が居るのに、チャニョルからされるキスで思わず漏れる声に、チャニョルだけじゃなく自分に対する嫌悪感で涙が溢れる。

「…セフナ…。」

チャニョルが口を離すと、僕は乱れる息でセフナの名を呼んだ。

「…ごめん、セフナ…。」

伸びてくるチャニョルの手にビクリと肩を震わすと、その手は僕の涙を拭った。

「…なんつー顔してんだよ。」

「え?」

そう言って一瞬見せたチャニョルの表情は、いつもの余裕ぶった憎たらしいものではなく、どこか切羽詰まって切なかった気がすした。

「休憩終わるまでに、その泣き顔何とかしろよ。」

そう言うと、顔を伏せたままバタンとドアを閉めて出ていってしまった。

1人とり残された僕は、まだチャニョルの温もりが残る唇を、自然と指でなぞっていた。

その気持ちがまだ何なのか分からずに。


Fin.

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