ニョルド

□風邪ひきさんと、ツンデレくん
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ピピッピピッ

電子音で目覚めると、見慣れぬ白い天井がぼんやりと見える。

あれ、さっきまで俺ベッキョンと喋ってなかったっけ…。

「37,6℃ですね。先程よりは下がってきてますので、おそらく疲れでしょう。解熱剤を出しておくので、ゆっくり休んでください。」

あーそっか…。

俺、調子悪かったんだ。

公演中はだましだましやってたし、このまま何とかなるって思ってたけど、終わって気が抜けて倒れたんだな…。

「ありがとうございました、先生。」

ドアの閉まる音とともに、重だるい身体を動かそうとしたその瞬間…。

「いてっ!」

「おいバカチャニョル。」

いつにも増して低い声でバカ呼ばわりをしながら耳を引っ張ったのは、ギョンスだった。

「バカは余計だろ!」

「そうだな、バカは風邪ひかないっていうから、バカは余計だったな。」

「そうじゃなくて!うっ、ゲホっ」

そう言って咳き込む俺を、ギョンスは寝かしつけた。

「…お前、調子悪いの何で隠してたんだよ。」

「だって…。公演続きで、しんどいからって穴を開ける訳にいかないじゃん。」

はぁとギョンスはため息をつくと、冷えたペットボトルを俺のおでこにあてた。

「気持ちいい…。」

ころころおでこの上で行き来するペットボトルの動きがふいに止まる。

「それはそうだけど、そういうことじゃないだろ…。」

「?」

不意にギョンスの顔が曇ったと思うと、バタン!と医務室のドアが勢い良く開いた。

「チャニョルー!お前、大丈夫か!?ギョンスまで真っ青になってすっ飛んで来たんだからな!」

「うるさいよ、ベッキョン。」

「あ、悪い悪い。」

ギョンスにたしなめられると、ベッキョンは肩をすくめて、ソファーに腰掛けた。

「…ジュース買いなおしてくる。」

何も言うなよとばかりにベッキョンを睨みつけると、ぬるくなったペットボトルをテーブルに置いて出ていった。

「…なぁ、お前なんでギョンスに調子悪いの隠してたんだよ。」

「?さっきも同じことギョンスに言われた…。」

「さっきも言ったけど、隣に居た俺よりも先にギョンスがお前んとこすっ飛んで来たんだからな〜。」

「ギョンスが?」

「そうそう、普段はツンデレっつーかほぼツンだけどさ。それはお前が無条件に頼ってくるからこその態度じゃね?あいつ、お前に対する庇護欲?っていうのすげー強いと思うし。ま、要は愛されてるっていうこと!って!いでっ!」

「ベラベラうるさいよ。そんなのは1人で充分。」

「チャニョルと2人っきりになりたいってこと?いでっ!」

ギョンスに締め上げられたベッキョンは、それでもニヤニヤしながら廊下につまみ出されてしまった。

賑やかなベッキョンが出ていった部屋は少し静かになったけど、ギョンスとだから気まずくないし、むしろ心地いい静けさだった。

「ギョンス、膝貸して。」

「しょうがないな。」

言葉ではそう言うけれど、ギョンスは自然に膝枕をしてくれて、汗ばんだ俺の前髪をかき上げてまたペットボトルを当ててくれる。

「さっきの事だけどね。」

「ん?」

「ギョンスいつも仕事がハードじゃん。それなのに弱音も吐かなくてさ、カッコいいんだよね。だから、情けないところ見せられないっていうか…。」

「僕は練習生の頃から、お前の情けない所なんて山ほど見てきたよ。けど、見せられるのは僕ぐらいだろ?」

「それは確かに…。」

「あの頃からお前に頼られるのは慣れっこなんだよ。」

そう言って俺の髪を撫でるギョンスの手はやさしい。

何だかあったかくてふわふわして眠い。

「お前が迷惑かけない方が迷惑なんだよ。」

ふわりとおでこに柔らかい感触を感じたと共に、俺はまた幸せな眠りに落ちた。



fin.



タイトル思いつかなくてこれに…。(タイトル付けるの苦手です。)
それにしても、風邪ひいてギョンスに看病されたい人生でした(笑)

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