ニョルド
□きっと明日もいい日になる(夏休み編)
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「父さん達〜!早く早く!花火始まっちゃうよ〜!」
玄関でセフナが叫んでいる。
「セフナ、ちょっと待って〜。よしっ!できた!」
背中にうちわを差すと、やっとチャニョルの着付けが完成した。
3人分だったから大変だったけど、すげーと喜んでるチャニョルを見ると、頑張って良かったと思う。
…それに、いつも一緒に居る僕から見ても惚れ惚れする程浴衣が似合っている。
「ありがとな、ギョンス。」
「…ん。」
そう言って笑うチャニョルに、赤い顔を見せるのが恥ずかしくて俯いて襟を直す。
「何?惚れ直しちゃった?」
「もう!」
ニヤリと笑うチャニョルに、悔しくなってぽかっと叩くけど、あははと笑う横顔は嬉しそうだった。
「もう〜、いちゃついてないで早く行かなきゃいけないでしょ!」
セフナが呆れた様子でリビングに迎えに来ていた。
先を歩くセフナとチャニョルの背中を見ると、3人手を繋いで並んで歩いていた日の事を思い出した。
今ではセフナは僕達の事をパパじゃなくて父さんと呼ぶ様になり、手を繋いでくれることもなくなっちゃったけれど、それもセフナが成長している証拠なのだと、寂しくもあり嬉しくもあった。
3人でこうして花火を見られる今を大切にしなきゃ…と思った。
「わぁ…綺麗。」
夜空に広がる色とりどりの花火の光に、思わずため息が漏れた。
「そうだな。」
そう言うチャニョルの横顔も花火に照らされてキラキラしている。
「あれ?セフナは?」
さっきまで近くに居たはずのセフナの姿が見えなくなっていた。
「あ〜、何か同じクラスの女の子に声掛けられてて、少し行ってくるってさ。」
「…あ、そうなんだ。」
何だかセフナが僕の考えているよりもずっと大きくなっていたんだな、と何故かショックを受けて言葉に詰まった。
「セフナも本当に大きくなったな…。」
チャニョルも心なしか寂しそうだった。
「でも、こうして2人になれる時間も増えるから、ギョンスとの時間を大切にしなきゃな。」
きゅっと僕の手を握るチャニョルの手は温かい。
「うん。」
打ち上がり続ける花火を見ながら、僕もチャニョルの手を握り返した。
fin.
おまけ
「ギョンスー、浴衣脱がせて♡」
「(絶対にやましいこと考えてる…。)ばか!」