ニョルド
□コットンキャンデイの騎士
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超短編。幼なじみ設定。
「ギョンスぅ…。」
ふわふわの綿菓子色をした髪の毛を揺らしながら、同じく舌足らずなふわふわした口調でしゃべるのは、幼なじみのチャニョルだ。
ふわふわした口調には似つかわしくない低い声と、僕より20cm近い図体は『可愛い』とはけっして言いがたいんだけど。
「何?」
一歩先を歩いていた僕が振り返ると、チャニョルはまるで捨てられた犬みたいな視線で僕を見つめる。
「何で僕…じゃなくて俺に言ってくれなかったんだよっ!」
まだ小さい頃からの「僕」って言うクセが抜けてないんだな…とぼんやりと考えていると、チャニョルは怪訝そうな顔で僕を見つめる。
「別に。僕が目付きが悪いって誤解されることなんかよくあることだろ。この前は、たまたま先輩の虫の居所が悪くてぶたれただけだよ。」
そう言うと、チャニョルは口をへの字に曲げて、綿菓子頭を揺らす。
夏の日を浴びた綿菓子頭は、紫にきらめいて甘そうだ。
「俺じゃ頼りない?」
ああそうだった。
綿菓子頭にしたのも、『僕』を『俺』に頑張って変えたのも、誤解されやすい僕を守るためだったね。
「ううん。」
チャニョルのへの字に曲がった口元が少し腫れていることに僕が気付かない訳がない。
僕の為にケンカを売るくせに弱いのも昔から変わらないね。
「俺に守らせてよ。」
ぎゅっと僕を抱き締める腕に力がこもる。
昔は僕より小さくて太っちょで、すぐ泣いてたっけ。
いつの間にか僕の身長を追い越して、やせてカッコ良くなって…。
自分がどんだけ騒がれてるか知ってるのかよ。
「…当たり前だ。よそ見なんかせずに僕を守ってくれよ。」
そう言うと、チャニョルはへへっと笑って綿菓子頭を揺らした。