セフド
□Blue
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世の中の恋愛を華やいだピンクだと表現するなら、僕のヒョンへの報われない恋心はどこまでも深い青だ。
「本当にチャニョルってバカ。」
そう言ってため息をつくヒョンの相談に、僕は今日も嫉妬心を隠しながら理解ある弟のフリをして乗っている。
ヒョンがため息をついている理由は、ドラマ撮影や海外の仕事でただでさえすれ違っていて連絡がつきにくいのに、インスタは更新しても電話はなかなか繋がらないから、ケンカになったのだ。
おそらく、撮影が終わるのは深夜だし、海外は時差があるから、チャニョリヒョンなりに気を遣って連絡を控えていたのだろう。
インスタの更新もチャニョリヒョンのファンへの気遣いだろうし。
好きだと分かりやすく愛情表現するチャニョリヒョンと違ってギョンスヒョンは言葉には出さないけれど、ギョンスヒョンもかなりチャニョリヒョンに惚れ込んでいる。
「会えなくて寂しいって素直に言ったらいいじゃないですか。」
「…そう言えたら苦労しないよ。」
お互い思い合っているのに素直に言えないヒョンに苦笑いしながら、自分が入り込む心の隙間を探す。
「…僕ならヒョンに寂しい思いをさせないのに。」
え?とヒョンが意味を図りかねたのか、キョトンとしている。
「僕なら、ヒョンが望む言葉も望む時間も全てあげられる。」
「…セフナ?」
こんなに近付いているのに、警戒すらしないヒョンに、僕はどこまでもヒョンにとっては弟なんだと思い知らされる。
「…奪ってもいいですか?」
カチャリと静かにドアの開く気配を背中に感じながら、壁際にヒョンを追い詰めて囁く。
「セフナ、てめぇ何してんだ…。」
地を這う様な低い声に振り返ると、まるで悪魔の様な形相でチャニョリヒョンが僕を睨んでいた。
「別に。ギョンスヒョンの相談に乗ってただけですよ。」
「チャニョルっ、本当に相談してただけだからっ…。」
「…。」
「ギョンスヒョン、寂しい時はチャニョリヒョンに甘えないと。チャニョリヒョン、後は頼みましたよ。」
ポンッとチャニョリヒョンの肩を叩いて、耳元でそっと囁く。
「…じゃないと、ギョンスヒョンは僕が奪っちゃいますよ。」
ドアを閉めると、僕はその場に座り込んだ。
中からは2人のくぐもった話し声が聞こえてくる。
「寂しかった。」
「ごめん。」
切れ切れに聞こえてくる言葉から、2人は無事に仲直りできたのだと分かる。
…いつかきっと、ギョンスヒョンを奪うから。
僕は深く青い闇の中に灯る炎を感じながら、そっと目を閉じた。
fin.