チャンベク
□おやすみ
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「チャニョラ〜。」
ヘッドホンを外して振り返ると、ベッキョナがドアの前に立っていた。
いつもならまだこの時間はゲームにでも熱中している時間だ。
それに、俺の作業室に入るのも遠慮するのか、普段はなかなか入ってこない。
入ってくるのは…。
「…一緒寝よ?」
そう、ベッキョナが少し元気が無い時。
ステージでは元気いっぱい、自信に溢れたベッキョナだけど、時々悩んだりするみたいで、そんな時はこうして甘えたいモードになるみたいだ。
「分かった。もう遅いし、丁度寝よっかなって思ってたとこ。」
そう言うと、ふにゃっとした幼い笑顔になる。
「チャニョラのベッド、でかーい!」
大きめの俺のベッドに、ベッキョナが大の字になって占領する。
「俺が寝れないじゃん。」
そう苦笑いすると、ベッキョナがふふっと笑って、ここと言う様によけた場所を叩く。
「なぁチャニョラ〜…。」
「何?」
「俺…上手くやれてる?間違ってない?」
まるで捨てられた子犬の様な不安な目が俺を捉える。
ベッキョナは、もう二度とチームには迷惑をかけない、誰よりも頑張ってみんなに信頼をしてもらおうと、毎日頑張っている。
けれど、実はこうして不安な気持ちもあるんだってことも知ってる。
「大丈夫、みんなベッキョナの事、ちゃんと頑張ってると思ってるし、信頼してるよ。」
そう言うと、一瞬泣きそうな顔をしたかと思うと、笑顔になった。
「…ありがと。」
照れたのか、もぞもぞと俺の胸に顔を埋める。
ぽんぽんと背中を叩いてやると、いつの間にか寝息が聞こえてきた。
引き寄せると、ふわふわの髪から淡く甘いベッキョナの香りが鼻腔をくすぐる。
「…ったく、うちのお姫様は世話が焼けるな。人の気も知らないで…。」
うーんと無意識に俺の胸に顔をすり寄せてくるベッキョナのおでこにキスを落とす。
「甘えるのは俺だけね。」
自信いっぱいのベッキョナも、不安なベッキョナも俺だけに見せて。
誰よりもベッキョナに幸せになって欲しいと思ってるのはきっと俺だから。
とりあえず今は…
「おやすみベッキョナ。いい夢を。」
Fin.