レイチェン

□Monster(ジョンデside)
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「僕の『好き』はジョンデを僕のものだけにしたいっていう好きなんだよ?気付いてた?」

イーシンヒョンにそう囁かれた瞬間、貴方の中のモンスターを飼いならすことができたのは自分なのだと心の中で笑った。



貴方に初めて会った日のことはよく覚えている。

重ための二重瞼に厚い唇、その唇から発する舌足らずな喋り方、その全てが僕の好みだった。

そして何より僕を引き付けたのが、その美しい見た目に似つかわしくない欲望を含んだ漆黒の瞳だった。

イーシンヒョンは僕と同じものを持っている、そう確信した。

明るくて気の利く子、それが周りによく言われる言葉だし、実際僕が周りに見て欲しい僕のカバーでもある。

その実、僕は人一倍支配欲が強くてそれを満たしてくれる相手を探していたが、こんな人間だと思わなかったと今までの恋人たちは僕の元からすぐに去って行ってしまった。

貴方は逃がさない、そう、僕のモンスターになってもらうよ。

念のため、僕はしばらくイーシンヒョンの様子を「面倒見のよい弟」として伺うことにした。

イーシンヒョンは元々優しい性格らしく、自分でも今までに抱いたことのない黒い感情に戸惑っている様子だった。

でも、そんなぬるい気持ちじゃ僕は落とせないよ?じれったいから、僕から仕掛けてあげる。

「何か、ヒョンって可愛いですよね〜。」

何気なくイーシンヒョンにそう話しかけた。

ダメ押しで「男の僕から見ても可愛いですよ。」と無邪気を装って言うと、イーシンヒョンは戸惑った表情を浮かべたかと思うと、今までに聞いたことの無い様な低い声でこう言った。

「…誰にでも言うんだね。」

そうこなくちゃね。

その日からイーシンヒョンはぼんやりしていることが多くなった。

どうやら僕の放った毒が上手く蝕んでいる様で、思い通りにイーシンヒョンを動かしていることに笑いが止まらなかった。

そろそろ最後の罠を仕掛けるのに良い頃合いだろう。

きっと貴方は僕だけのものになる、そう考えただけで身震いした。

僕はイーシンヒョンと共同研究している実験データにほんの少し小細工を加え、締め切り期限ギリギリに遅れるように手を加え、二人で残業を命じられるようにした。

イーシンヒョンは隠してはいるみたいだけどその目は据わっていて、僕はゾクゾクした。

もう少しで貴方の殻を破って外へ出してあげる。

「ヒョン、少し休憩しましょうか。」

日付が変わるタイミングで、僕はイーシンヒョンに声を掛けた。

僕にとっては心地いい張り詰めた空気を、イーシンヒョンは破った。

「ジョンデ…。ずっと前から伝えたかったんだけど、君のことが好きだったんだ。」

「僕もイーシンヒョンのことが好きですよ。」

貴方が思っているよりずっと歪んでいるけれど。

「僕の『好き』はジョンデを僕のものだけにしたいっていう好きなんだよ?気付いてた?」

僕の手を掴んで壁に押し付けるその衝動的な痛みは、ずっと僕が欲していたものだ。

深く暴かれて、奪われて、貴方の望み通りのごちそうをあげる。

その代わり、貴方の心を僕がすっかり残らず食べてあげる。

貴方の手が頬を滑る感覚を、夢うつつに楽しむ。

その手は温かい。

そう、僕は貴方を愛してる。





fin.

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