レイチェン
□君想う夜
1ページ/1ページ
上海 1:00 AM
ホテルに着くやいなや、ベッドに倒れ込んだ。
気だるい体を動かして壁時計に目をやると、既に深夜の一時を指している。
カーテンの隙間からは、こんな時間でもギラギラと眩しいネオンがちらついて見える。
休みなく疾走し続けるこの上海という街は、まるで今の自分みたいだとぼんやりと思った。
スマホの通知ランプに気付いてカカオを開く。
「イーシンヒョン、無理だけは絶対にしないでくださいね。あなたは見ていて誰よりも危なかっしくて仕方ないんですから。でも、そんなヒョンを誰よりも応援してます。」
そう言って困ったような、けれども慈愛に満ちた眼差しで僕を見つめる君が目に浮かんで、思わずくすりと笑みが漏れた。
本当、君は意地っ張りで言い出したら聞かない僕のことは何でもお見通しだね。
こうして少し疲れて僕が立ち止まりそうになる時には、欲しい言葉をくれるんだ。
「けど、僕もそんなに強くないから。たまには夢の中でもいいから会いに来て。」
いつも僕の前では明るい君の本音に、チクリと胸が疼く。
いつもごめんね、そしてありがとう。
「今から行くから待っていて。ジョンデ。」
君の温もりを思い出しながら、そっと瞳を閉じる。
fin.