レアCP
□ガラスの檻
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パチン パチン
「痛くない ?ベッキョナ。」
「うん、大丈夫。ありがと、レイヒョン。」
そう言うと、レイヒョンは「ほら綺麗になった」と微笑みながら俺の足をとる。
足元には切り落とされた俺の爪の残骸。
今日も俺はこうしてレイヒョンの手で『綺麗なベッキョナ』へと作り変えられていく。
「…綺麗だよ、ベッキョナ。」
レイヒョンはそう満足気に笑うと、真っ白なシャツから伸びる俺の脚に手を滑らせる。
足の甲に感じる、ひんやりとしたレイヒョンの唇の感触が心地いい。
「…レイヒョンもっと。」
離れていく唇が名残惜しくてもっとと催促すると、レイヒョンは口元だけ微笑んで「仰せのままに。」と唇を上に進める。
「…失礼します、レイ様。」
「何?」
レイヒョンは眉を顰めて声の主を軽く睨む。
「申し訳ありません。例の件で一報が入りまして。」
「…あぁ、チャニョルの件ね。」
そう言うと、レイヒョンは呆気なく俺の足を離す。
…いい所だったのに。
口を尖らせていると、ゴメンねとレイヒョンが僕の頬にキスを落とす。
レイヒョンの手から離れて行き場を失った俺の脚は、プラプラと宙を舞う。
「ちぇっ。つまんないの。」
綺麗に切りそろえられた爪が、太陽の陽を浴びて白い足に映える。
俺はまた、四角く切り取られた青空だけが見える真っ白な部屋に取り残された。
「レイ様、失礼ですがあのベッキョンとやらをお傍に置いておくのは危険では…。」
「…うるさいなぁ。」
「しかし、あの少年の目の前でレイ様は家族を…。いつ記憶を取り戻してレイ様に刃を向けるか…。」
「大丈夫だよ。あの時、全て忘れてガラスの檻に入ったら、一生大事に飼ってあげるって約束したからね。もちろんその時に翼も折ってあげたよ。」
マジックミラー越しに見えるベッキョナは、ぼんやりと空を見上げていた。
「へぇ、君が噂のベッキョン君?ビョン社長にすごく可愛い息子が居るって聞いてたから興味があったんだ。」
「何だてめぇ!父さん!母さん!兄ちゃん!」
「…ベッキョナ…早く逃げなさい…そいつは悪魔の様な人間だ。」
「悪魔なんて酷いなぁ。借してたお金を返してもらいに来ただけだよ?」
「だからって…こんなの酷いだろ!父さんと母さん、兄ちゃんを助けろよ!」
「それは君次第かなぁ。全て忘れて僕の物になるって言うなら、考えてあげるけど。」
「…分かった。何でもあんたの言うことは聞く。」
「ベッキョナ…だめだ…。やめなさい。」
「だから、命だけは助けてくれ…。」
「…いい子だね。」
おいで、と手招きする悪魔の誘惑に俺は負けた。
「ただ、人の言うことは素直に信じちゃいけないよ。…始末しておいて。」
…何も思い出せない。
「一生大切に飼ってあげる。」
俺に思い出せるのは、天使の様に微笑んで手を差し出すレイヒョンの残像だけ。
あの時、俺は『お願いだから命だけは助けて』って、泣いて縋っていた気がするのは気のせい?
さっきまでレイヒョンが唇で辿ったラインを指でなぞると、くすぐったくて身震いした。
やっぱり思い出すのはやめよう、きっと今が1番幸せだから。
fin.
とち狂った話ですいません…。
ベッキョンセンイルの話だったんですが(笑)
以前書いた、闇金融のトップレイヒョンと謎の愛人ベッキョン(レイヒョンの部下はチャニョル、その恋人はレイヒョンから借金してるギョンス)のスピンオフ的な話です。
レイヒョンは心を病んだ本妻と、その他にも愛人居る設定です。(闇深)