白西 短編小説
□君と出会うためなら
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私の名前は白石麻衣。コードネームは820。私の仕事は非常に稀で、いつも危険と隣り合わせである。
簡単に言うと、スパイです。
私には定時的に任務が下される。
内容はバラバラ、金持ちの迷子犬探しや、黒幕のボスを暗殺など………
そして今日、私にまた新たな任務が下された。
(ぶー、ぶー、ぶー、ピッ)
携帯:
820へ
今回はかなり重要な暗殺ミッションだ。必ず成功しろ!
ターゲット:西野七瀬。
23歳。カンギス会社(黒幕)の唯一の後継者の、その彼女。
後継者の口から機密を知っている。
ポイント:彼女と恋人になり。機密を聞き出し、確実に殺せ…………
「女の子と、恋人?」
翌日。
私は男装し、彼女の街に潜入した。
黒髪のカツラを被り、白石裏人という男の人物として。彼女に接近するための準備を始めた。
ミッシェルフラワーガーデン。
彼女がバイトをする場所。花を見るふりしてこっそりと観察しながら、人気のないときを伺う。
「あの、すみません。オススメとかありますか?花とか全然わかんなくて…………」
できるだけ自然でかつ爽やかに、低い声を作りながら彼女に話かけた。
「あの、もしよかったら連絡先交換しませんか?花のことわからないし、聞ける人もいないから…………」
瞳をうるうるさせ、捨てられた子犬のように彼女をみる。さらに眉間にシワを寄せ、少し困った表情を作る。ネットにあった釣り技だ、初めて応用したけど。
「ええよ。そう言えば君の名前知らんな、私は西野。西野七瀬や、君は?」
「りと。白石りとです。」
初めての釣テクはどーやら成功したらしい。あれから、私と七瀬の関係友達以上、恋人未満とまでなっていた。
でも、これだけは先に言っておこう。連絡先を交換したあの日以来私の心はどーやらおかしくなっていた。
「りとくん!これどう思う?」
「ふぅん、かわいいじゃん。七瀬に似合ってるよ」
「えー、そうかな〜?じゃなな買っちゃおうかな?」
「うん、結構ぁ………」
(っ!?)
「ごめん、ちょっとトイレ」
(ぶー、ぶー、ぶー、……………ピッ)
携帯:
820へ。
上からの命令。
機密はもうわかった。
彼女はもう用無しだ。
今夜でしとめろ。
短くそう綴かれた文章。でも、ひどく胸を打つ。そっか、もう潮時か……………
こんなこと今まで何回もあったし、平気だ。でも、