白西 短編小説
□夏色マドンナ
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大学に入ってから最初の夏休み。
小遣い稼ぎのため、友達のかずみんと近くにある海の家でアルバイトを始めた。
大変だとはわかっていたけれども、初日からずーっと店長に
「西野!お前、オープンキッチンで呼び込みやってくれ!」
と言われて。
この最近、毎日毎日猛暑のなかで焼きそばを作っています。
かずみんには
「いいなぁ!海の家でのオープンキッチンは、看板娘ってことだよ!」
なんて羨ましがられたんたが、ななにはこんな暑い空間はごめんだ。
遠くにある海を見れば、大勢の人たちが泳いでるのが見える。
(ええな、気持ちよさそうで。ななも泳ぎたいなぁ〜)
なんてありもしないことを考えながら、ただ無心にヒラを返し続けるだけ。
「すみません、焼きそばを一つ!」
前から客らしき女性の声が聞こえて、逸らしていた目をその人に合わせた。その瞬間、私の体に電流が走った!その美しさに私はただただ唖然としていた!
「あの……?」
「あっ、五百円となります!ガサガサ……はい!五百円、確かにお預しました!ありがとうございました!」
と動揺を隠しつつ深くお辞儀をした。
また遠くをみれば、オレンジ色のラッシュガードに水色の水着。一つにまとめたポニーテールで余計白い肌がよく映える。その後、仕事にも集中出来ず、これらがまるで呪文みたいに、頭の中でぐるぐるとまわる。
「なぁちゃん!何見てんの?」
「あっ、かずみん……ちょっとあの人のこと、気になってん」
(視線の先をあわせるかずみん)
「あぁー、夏のマドンナ?」
「マドンナ?」
「そう、夏のマドンナこと白石麻衣!今年のサーフィンクィーン!かっこいいし、美人だし!まさに完璧な人!」
へぇー…………って目をギラギラとさせながら、語るかずみんを見て。どうやら、この数日間下げていたテンションが爆発したようだ。
そんなかずみんと語りながら、気づけば白石さんと目があってことに気づいた。慌てて目を逸らし、その後の仕事に打ちこんだ。
バイト上がり、空模様が暗く変化し夕暮れとなっていた。
今日はかずみんと一時間シフトがズレているため、初めて1人で店員専用の出口に出た。その先には、黒い人影がこっちを見て待ち人っぽい。
「っ、あなたは………」
今年のサーフィンクィーン、白石麻衣が堂々と扉の前に立っていた。