白西 短編小説
□二つの世界
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放課後。
誰一人いない夕焼けの教室にななは一人、通知の白紙をみていた。
「あれ?西野さん?まだ帰ってなかったの?」
そう声をかけてくれたのはクラスメイトの白石さん。
忘れ物を取りに来たらしく、ソフトのユニフォーム姿でななの目の前に現れた。
白石さんは学年の中でも有名すぎる人。美人で、ソフト部のエースで、誰とでも仲良くできて、
そして、ななの好きな人…………でもある。
でも、この恋は結ばれない。
そんな完璧な白石さんの隣に、ななは必要ないし、所詮二つの違う世界に生きている他人なんだと、ななは知っとる。
「その紙は?」
「あっ!何でもない!なな、もう帰るな……」
慌てて紙をバックにしまい、白石さんから逃げるように、ななは白石の隣を素通りした
「待って」
そんな過ぎ去るななの手を白石さんは強く掴み、振っても離せんかった。
「西野さん、いいたいことがある……ちょっとの間、いいかな?」
八の字の眉、まるで捨て犬のように、たどたどしく白石さんはもう立ち止まったななの手を恐る恐る離し、向かい合う形でキッパリとななに言うた。
「西野さんのこと、ずっと前から可愛いと思っていました。
無意識のうちに目で追っちゃうし………
気になって仕方ないし………
高山さんと笑い合っている時とか最高にイライラした…………
七瀬が好きです!付き合ってください!!」
「へぇ?」
突然すぎる、学校一美少女からの告白!!
どうすればいいのかわからず、そわそわと挙動不審になる私。
とりあえず、差し出された白石さんの手を軽く両手で包み、パーっと一瞬明るくなった白石さんの顔をただ無表情で見つめる。
「…………ごめん、ななは白石さんと付き合えへん。
ななと白石さんは二つの世界やねん。付き合ったら、白石さんは絶対困るから…………ごめん………」
「なんで?」
ななの手を引く白石さん、決心に溢れた白石さんの瞳から不安と揺らぎに満ちたななの瞳がはっきりと映る。
「私は真剣に、、七瀬が好きだ!私じゃダメ?」
ななの目を見て、不安そうに言う麻衣。
(ななも、麻衣が好き…………)
でも、
「ごめん!!!」
ななは思わず教室を駆け出してしまった。
ごめん、ごめんね麻衣。廊下を走りながら、目から涙が止まらない。
「ななも麻衣が好き……………」