Dream
□彦星と織姫
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「ねえ!ちあき!フィギュアスケートとか興味ない?」
昔からの友人が突然漏らした言葉だった。
友人曰く、彼氏と行く予定だったのに彼氏が浮気をしていたとかなんとかで、チケットが一枚余ったので一緒に、行って欲しいとのことだった。
「いつ?」
『それが、七夕なの。予定ある?』
「なし。私の彦星はいつくるんだろーなー」
私はもう何年も彼氏もいない。
冗談交じりで、私は応えた。
チケット代は友人が持ってくれるとのことでなおさら、カップルがイチャつくような浮ついた夜に一人で過ごさなくても良くなった。
「けど、全然知らないんだけど…」
口を開いた瞬間、目の前に数冊のスケート雑誌が置かれた。
『今回、出演するのはこの人とこの人とこの人と……』
丁寧に教えてくれた。予習してきて!と言われるがまま、家に持ち帰り、一読する。
「うーん。外国のスケーターさんはイケメンだなー」
なんて、漏らしながらパラパラとページをめくる。
『金メダリスト 羽生結弦』
なんて、デカデカと書いてあるのにも関わらず、すぐにページをめくる。
「若いのにすごいなー。」
それくらいにしか思っていなかった。
あの日、彼が私の彦星になるなんて、この時の私は、まったく想像していなかった。