Dream
□彼のこと
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私の彼は、有名人だ。
氷上の王子様なのだ。学校の教科書にも載っていて、一度見目にしたら忘れられなくくらい人を惹き付ける。そんな人。
羽生結弦
今や知らない人はいないくらいの有名人。
「……?ちあき?聞いてる?」
今、そんな彼と束の間のランチタイム。
アイスショーの会場の関係者以外立ち入り禁止区域の中にある小さなカフェテリアにいた。
『ごめんね。で?なになに?』
「そうそう!ノブくんの変顔、面白くて!」
なんて他愛のない会話。もう少し一緒にいたいが時間が気になっている無邪気に笑う彼と一緒に笑う。
「……もう時間。」
突然の沈黙。向かい合って座っていた、テーブルの上に置いていた私の手の甲に彼のしなやかで細い指がつたい手首でギュッと握られる。
ビックリして彼を見た。
さっきまでの無邪気な笑顔が消えて、真っ直ぐな眼差し。目が離せない。
「もう行かなきゃ。ちあき、ショー終わったら、俺の部屋ね。待ってる」
彼は、席を立ち小さな声で私の別れを惜しみながら、耳打ちをして去って行った。
「あとでね。」
今夜、私は彼の部屋に行く。