Dream
□彼と彼女のデートまで
2ページ/5ページ
毎日、練習に取材に忙しい。休みが取れたとしても、1日〜2日。日本に行って戻ってくるにしてもとんぼ返りなんて嫌だ。
ちあきさんを目の前にして話したい。
ちあきさんに、会いたい。
ちあきさんに、触れたい。
メッセージや時差のあるテレビ電話だけじゃもう、足りない。
付き合い初めて数カ月。きっと他のカップルだったら、何十回もデートしたり、ハグしたり、キスしたり、甘えたり、甘えられたり、それ以上の事だって………
いつも絶対間違えないステップを間違えてしまうくらい、俺は参っていた。
そんな中、俺もちあきさんも喜ぼしい仕事が入ってきた。
すぐにでも伝えたい。
だけど、驚かせよう。一週間から二週間かかるから、時を見計らって、いつもみたいに、絵はがきを買ってペンで愛情を込めて書く。
"日本での仕事が決まったよ。長くて1ヶ月は、そっちに帰れる予定。会いに行く"
エアメールを出し、彼女に、メッセージを送る。
いろいろ聞かれたけど、これはもう内緒しか言えなかった。喜ぶ顔が見たい。
早く、会いたい。それだけだった。
空き時間で、荷造りをして、トロントの街のお土産屋さんにお土産を買いに行く。
いつもポストカードを買いに行く店に、行く。
ポストカードコーナーしか見ていなかったが周りを見渡すと、可愛らしい雑貨ばかりで少々気後れした。
ぐるりとめぼしいものを探して一周すると、1匹のネコのぬいぐると目が合った。青い瞳の三毛猫のぬいぐるみ。なんだか表情がちあきさんに似ている。
本人に本人そっくりのぬいぐるみってどうなんだろ?と思ったが、そのぬいぐるみを購入した。
首元が寂しかったので、ネックレスもつけてあげようかな。
ちあきさんのイメージにぴったりのネックレスを見つけて、俺のテンションはMAXになっていたが、出発日まで、時間があった。
浮かれて練習出来ないなんて思われたくない。取材も、妙なテンションにならないように気をつけた。
だけど、練習はいつもより絶好調過ぎてハビやブライアン、他のチームのメンバーにもバレバレだったし、取材も、いつもより饒舌で所々にやけていた。
『ユヅル、恋人に会いに行くんでしょ?みんなにバレバレだよ』
ハビエルが、練習の合間に話しかけてくる。
「帰国するだけだよ。そんな、恋人なんて……」
『じゃあ、なんであんなプリティなネックレス選んでたの?』
「え?!見てたの?!」
ハビエルは、僕は知らないよというポーズでリンクに戻った。
後ろから、チームメイトが一言
『ユヅルって、恋愛にはドライに見えるけど、恋人にネックレスを選ぶなんて案外独占欲が強いのね。意外〜♪』
俺は、そんなこと知らずに買ってしまった。だけどきっとちあきさんに対して、独占欲は強いと思う。
「まあ、外れてないか。」
ピロン
ナイスタイミングで、メッセージが届く。
"え?!帰ってくるの!?いつ?!"
あわわわと焦ってるスタンプと一緒にメッセージがきた。
俺は、一言だけ
"4日後"
と返した。帰国まであと少し。また気を引き締めて、練習に励んだ。