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□だから、不可抗力なんですって!
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「なんだこの可愛い生物は!!!???」
『うゎ、うっるさ!?』

……『それ』の存在に気づいたのは、ある意味奇跡かもしれない。なぜなら彼はとても小さいから。
緑色のカメレオンの如き愛らしいフォルム、真ん丸で大きな目、頭から腹にかけて大きく開く口、そこから覗く噛まれると少し痛そうなギザギザの牙、ちょこまか動く何本もの小さな手。
そう、彼こそは。
今の私の一番の推し、『鋼の錬金術師』に登場するホムンクルスの一人、『嫉妬』のエンヴィーの弱体化した姿である!
そんな私の推しである、彼が、なんとまあ何でだか、テレビが青く光った瞬間、画面から転がり落ちてきたのだ。

『あんた誰?つーか、ここどこ?』
「うわあああっ普通にしゃべってる可愛いいいいいぃっ!」
『……頭大丈夫?』

ホムンクルスに私の頭の心配をされた。何てこったこれじゃ私異常者じゃねえか!
深呼吸をしてから相手を見る。疑うような表情で見つめ返された、可愛い。
そんな、まさか、某有料BSチャンネルで一挙放送があるからってルンルンで大佐のぶちギレを観ていたらまさか薄型テレビから(私から見れば)天使みたいなホルムンクスが産まれるなんて、考えもしていなかった。

「瓶に閉じ込めて一生飼いたい……」
『はあっ!?なにいってんのあんた!?というかだから誰!?そしてここどこ!!?何があったんだよ、一体!!
ああもう突っ込みどころ多すぎるんだよ!!』

興奮する私、混乱しているエンヴィー、テレビ画面から迸る青い閃光と見馴れない軍服の少女……ん?
何か変なもの見た気がする。
そう思ってもう一度エンヴィーの向こうにあるテレビに視線を向けて……気づいた。
黒い軍服を纏った白髪のコスプレ少女が、テレビとエンヴィーの間に佇んでいた。
その姿は、先程までいきなり画面に登場したキャラクター。原作を知らない私は、「こんなキャラ出てたっけ?」と首を傾げたが、間違いなくハガレンにはこんなキャラいない。

「……誰?」
「やれやれ、タイミングというのは難しいな……」

私の質問には答えずに、ぐるりとリビングを見回すと、私を一瞥して「邪魔をしたな」と言うやいなやテレビの後ろにある窓を開け放った。

「ええええっ!?なっ、何してるんですか!?」

またも少女は私の言葉を無視すると、窓に手をかけて、そのまま飛び降り……待って、ここアパートの四階ですよ!?
窓に駆け寄って外を見ると、そこには誰の姿もなかった。



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