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□夢死・オリジン
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 超常黎明期、無個性の、ある一般家庭に、「他人の過去を覗く」個性の少女が産まれる。
幸いながら、彼女に「超常」の決定的な証拠となる外見的な特徴はでなかった。
 しかし幼少期、幼稚園の保育士に頭を撫でられた際、個性が発動。異常なほど長期に渡って、知恵熱を出す。
 これを気にした両親が病院で診察を受けたことにより、個性があることが発覚。
しかし本人や周りは、人との接触によって頭痛をもたらす個性と勘違い。だが、それも、脳の発達に伴って、徐々に本来の形である『過去視』として認識を改められる。
 子供に個性(超常)が発現したことにより、少女の両親は別居。数年後に、双方の浮気の発覚により、離婚。
 それから間もないうちに母親の妊娠が発覚。
母親の浮気相手との子供が産まれる。男子。
二歳頃から二人目の子供にも個性が発現。個性は、記憶の完全保持。
 幸いにも、二人とも一般的な人の形だったため、ひっそりと個性を隠して過ごす。
しかし、姉が中学の修学旅行中に、誤って、知り得ないはずのクラスメートの過去を口走り、発覚。
 それから卒業まで、学校ぐるみでの中学校での虐めに悩まされる。思春期特有の反骨精神と、親に対する不信感により、いじめに関してはだれにも相談することなく墓場まで持っていくつもりだった。
 勿論そんな状況で勉強に身が入るわけもなく、第一志望の高校には受からず、母親と口論の末、家を飛び出る。
 その後、一人で歩いていたところ、オール・フォー・ワンに保護(という名の捕獲)を受ける。
 衣食住を与える代わり、個性を使い、働くという提案をのむ。その仕事内容は具体的に知らされることなく、仕事が終わった後はオール・フォー・ワンによる記憶の編纂によって犯罪に加担しているという自覚はないままであった。
しかし、オール・フォー・ワンの弟との接触をきっかけに、自らの犯した最悪な現実を目の当たりにした女は、実家へ逃げ帰ろうとする。
 だが、女の個性をかなり重宝していたオール・フォー・ワンとしては、逃がすわけにはいかない。女の母を殺し、弟の個性を奪った上で人質にとり、女を連れ戻す。女に弟の個性を与え、更に酷使。
 女は、精神的な大ダメージと過労で倒れ、お役御免となり、棄てられる。弟は、それより少し早く始末されていた。女の個性は、オール・フォー・ワンでも、持っているだけでも負荷が掛かる、諸刃の剣であったため、その結末も、最初から想定されていた。
 オール・フォー・ワンの、他の捨て駒に個性を移し替えるために一時的に拘束されたところに、別件の捜査で潜入した刑事と遭遇。警察病院にて保護される。
 オール・フォー・ワンについての自供をするも、荒唐無稽な妄想として内々に処理され、監視の目を強化される。(実際は、オール・フォー・ワンの恩恵を受けた警察などの高官が、オール・フォー・ワンについての汚い部分を揉み消すための忖度であった。)
 しかし、女を保護し、聴取を行っていた刑事科警部・夢死築は、上層部の対処に不信感を覚え、女の供述を元に、密かに捜査を行う。
その過程で、二人は惹かれ合う。
 警察病院内で、女は築の娘を出産。母親の存在を世間から秘匿する様に、孤児として扱われる。
 出産後、長年の過労などにより、女は衰弱し、三十を目前に眠るように息を引き取った。
その数年後、築は養子として、女との子供を家に迎え入れた。


これが、現在までに続く、警察組織にその力を貸し続けるということで己の信義を貫く「夢死」の始まり(origin)である。

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