Fe=x 大人≧x≧子供

□陸、六日月
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連れ去られたと言いかけたように聞こえたのは気のせいだろう。
それより今は重要なことがある。

「条件付きと仰いましたね、その条件とはなんですか?」
「えっと……、『一、現世へ渡る際には必ず二部隊以上を本丸に残し、その間の出撃及び演練への参加は認めないものとする。
二、和泉守兼定は回復後も最低一週間政府の観察のもとリハビリに務め、その間審神者との接触は最低限禁止する。
三、和泉守兼定の特別治療処置期間内は審神者は政府の医療機関での検査と実験の臨時経過報告を義務付ける。
四、刀剣男士特別治療処置期間内、審神者は許可なしに指定区域内から出ることを禁止する。
五、以上の条件を破った場合、直ちにこの本丸は他の審神者の担当とし、和泉守兼定の経過に関わらず強制的にこの本丸に戻すこととする。また、現在の担当審神者はこの場合三年間の謹慎処分とする』……以上です!」
「また随分と勝手なことをべらべらと……」

私はこんのすけを見てため息を落とした。

「鶴丸国永、三日月宗近、それと、部屋の前で盗み聞きをしている大和守安定と加州清光。そろそろ演練の時間です、他のも呼んで早く行ってきなさい」
「気付かれてんじゃん馬鹿!」
「僕に言うなよ!あの人勘が良いんだよ!」

背後でガヤガヤと煩いのが二匹騒いでいる。
当てずっぽうで言ってみたが、当たっていたようで何よりだ。

「いいのか、主。今俺らが演練に行ったらこいつは……」
「だから、早く行けと言っているのです。幸い、時間制限は設けられていません。まだ私もやることがあります。話の限りでは、いつ帰ってこられるかも分かりませんしね」
「……了解した」

鶴丸が頷く横で、三日月宗近が寂しそうに笑った。

「主、すまんな」
「何が?寧ろ私は今珍しく貴殿方に感謝していたのに」
「……そいつぁ驚いた」

分かんなかったぜ、と苦笑いする鶴丸国永を一瞥してから三日月宗近に続きを促す。

「もう少し事を慎重に運んでいたら、もっと軽い条件で主をあちらへ戻してやることも出来たかも知れないと思うと、なんともな」
「つけあがるな」

反射的に口から出る。
だが、つまりそうだ。私の本心はその一言に尽きる。

「私はそんなに柔じゃない。侮るなよ」
「……はっはっは、確かにな!俺たちの主を名乗るのならばそれくらいでないと」

一瞬面食らったような顔をしたくせに、よく言う。
私は呆れながらも再び鶴丸国永を見る。

「一番隊隊長、よろしく頼みますよ。貴殿方が演練から全員無事に帰ってきてからあちらへ向かいます」
「はいよ。じゃ、ちょっと早いがそろそろ行くとするかね」

そういうと彼は、三日月宗近と大和守安定を連れて手入れ部屋から静かに出ていった。

「審神者さん……」
「これを始末したら、あとは支度に入ります。あいつらが帰ってくる前に頼みますよ」
「……うん」

手早く残りの蛆を取り除き、私は手入れ部屋をあとにした。
加州清光と共に私の支度も調える。

「ありがとね、主。あんたのお陰で、あいつと仲直り出来たかも」
「……さあ、なんのことやら。ですが、これから私がいないのに喧嘩をされても困りますからね。
本丸を頼みましたよ、二番隊隊長」

加州清光はくすっ、と笑い、「りょーかい」と返事をしたのだった。


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