Fe=x 大人≧x≧子供

□仇、九日月
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×××

――審神者side(現在)

「こんのすけが動かないなんて、想像したくはないですが十中八九故障でしょうね。
電力元は霊力と太陽光のはずだし、ちょっとやそっとの衝撃じゃ――それこそ、真剣の大太刀を真上から叩きつけられようと――壊れないはずですから」
「……自然には壊れない、ですか。なら犯人は一期一振で決まりですね」

東側の部屋に集まった刀剣男士の内の一人、私から一つ飛ばして左に座る宗三左文字が呟いた。
部屋の広さは八畳。その中に、私を案内した獅子王と山姥切国広、先程発言した宗三左文字を含めて七人と私が、ぴくりとも動かないこんのすけを囲んで円を描いて座っている。
私を始点として左から順に、山姥切国広、宗三左文字、小夜左文字、燭台切光忠、大倶利伽羅、歌仙兼定、獅子王……そして私に戻る。

「誘拐に器物破損……いくら人工的に作られた存在と言えど、か弱い命を蔑ろにするのは雅じゃないね」
「確かにこれは格好良くないね。それなりに世話にもなったし」

皆一様に気分の悪そうな表情を浮かべる。
これまでの思考ログはオンラインで保管されているため代替の体さえ手に入れば、記憶は元通りだが、今はそれどころではない。
こんな例は聞いたことがないため、現世に申請にいかなければならないがまず現世へ易々と渡れない。
私はこんのすけを目の前まで持ち上げて詳しく検分する。

「皆さん、お忘れかもしれませんが、今剣と小狐丸は私が無理やり連れまわしていただけです。彼らには、未だ私への忠誠の意思はありません。
三日月宗近と鶴丸国永は十中八九本物の人質でしょうが……もう二振りは、疑わしさの塊ですね。というか九割九分黒です。裏切者扱いで構いません」

 検分を進めながら会議に口を挟むと、嫌に重たい空気が下りてきたように感じた。
 どうやら見当はついてはいたようだが、あまりその可能性は考えたくなかったようである。申し訳ない気もするが、気のせいなので別にどうでもいいだろう。
 いつかは直視せざる負えない現実だ。私だって、どうせなら今すぐこんなところ放棄して寝所にこもって一日ふて寝に興じたいくらいなのだから、これくらいでへこたれてもらっては困る。

「……相手が一期一振だけでなく今剣と小狐丸というのは厄介だな」
「そうだね、からちゃん。今までは粟田口だけだから何とか凌げたけど、小狐丸も合わされば錬度が高過ぎる。武力では、もう太刀打ちは無理だろうね」
「しかも、今剣も厄介ですね。彼は、一見すれば素直で正直な子供ですが、腹の中では何を考えているのか……」
「だが、武力と策謀だけではどうにもならないから、人質まで取って審神者との交渉を条件にしているんだろう?」
「荒事をするうえで邪魔だったというのは理解できるが……態々壊せるはずのない、しかも壊す必要のないこんのすけを壊したのはなんでだ?」

各々が推測を述べている。私はと言えば、検分を終えていた。
「動機とやらは(おおよそしか)分かりませんが……方法は解ったかも知れませんよ」
そういうと、一斉に視線が集まった。

「さっき、あなたがご自身で言われたんですよ?こんのすけの破壊は無理だと」
「無理だなんて言ってはいませんよ。単に、ウルトラ超絶難しいと言っただけです」
「殆ど同じだろう!」
「あまり無駄口を叩くな。俺はもちろん、この場にいる和泉守以外の刀剣は、貴様となれ合うつもりなど毛頭ない」

……ぎゃあぎゃあ喚く煩い馬鹿どもに話を妨害される。ちょっと、イラっと来た。
呼んでおいて何様だ貴様らは。ここは一度、上下関係をはっきりさせておいた方がいいのかもしれない。


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