他メンバー

□夏の秘密
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「―――だって…ユナ先輩はお姉さんみたいに思ってる人やから……」

今日は俺とチャニョルが準備担当の日やから練習時間よりも早めに登校する日。俺は朝、チャニョルの顔を見るなり開口一番「ユナ先輩のこと振ったんやって!?」と、チャニョルの肩をむんずと掴んで揺らしながら聞いた。そしたら、さっきの返事や……

「でも、付き合ってみたらお姉さんが女に変わるかもしらんやん?だって、あのユナ先輩やで??!はぁ…俺は今度という今度はお前が心底…心底……う゛ら゛や゛ま゛し゛い゛ぃ゛ーーー!!!」
俺はまだチャニョルと俺以外来ていない静まりかえった体育館で思いのかぎり叫んだ。

「なんで、うらやましいの…??もしかして、ベッキョン…ユナ先輩のこと好き、なん……??」

「当たり前やんけ!!ユナ先輩を嫌いな男がどこにおるねん!!!この学校中、いや、世界中の男みぃ〜んなが好きやわ!!」

「そっか…でも、僕は、別に付き合いたいと思わへんから普通と違うんかなぁ……」
そう言うとチャニョルは大きい体を縮める様にして俯いてしまった。あ、俺、自分が勝手に羨ましくて、みっともない嫉妬全開でチャニョルのこと傷つけてもうたかも……

「いや…っ、そんなん人それぞれやで!さっきはちょっとおおげさに言いすぎたわ!チャニョルにとったらユナ先輩はお姉さんやねんもんな!そら、しゃーないわ、うん」

「でも、僕、今までユナ先輩以外の女の子に対しても別に何とも思ったことないよ…というか、どっちかゆうたら苦手かもしれへん…女の子のこと……」

「あぁ、俺も男兄弟だけしかおらんくて、あんまり女子と関わることなかったから女子と何しゃべってええかわからんかったりするし、何考えてるかほんまわからん!ってなったりすんで?そういうことなんちゃうんか??」

「僕、お姉ちゃんおるけど…」

「いや、姉ちゃんおったら女子が苦手じゃないとはかぎらんやん?あ、そうやっ!チャニョル!今度、合コンせぇへんかっ?!地元の奴に声かけて女の子集めてもらうし!俺の地元の奴やから、ここに通ってるお嬢様と雰囲気違うのが新鮮でええかもしらんで!俺と気ぃ合うくらいやねんから、そっちの方がええんかもわからん!」

「それは……」
チャニョルは眉をハの字にして、吸い込まれそうなくらいに大きな黒目をゆらゆら揺らしながらこちらをじっと見つめてくる。

「どないしてん?嫌か…??」

「う、ううん…っ!あんな、、そしたら、ちょっと頼みたいことがあるねん……」

「うん?何ぃー?」

「あの…とっ、特訓させてくれへんかな?」

「特訓…??」

「うん。僕、女の子苦手やん…?だから、苦手克服のためにベッキョンに協力してほしいねん…ベッキョンって、ほ、ほらっ、細くて小さくて顔だって…お、女の子みたいやんっ?だから、ベッキョンで練習させてくれへんかな……いっ、今のままやったら僕、きっ、きっと困ると思うねん!だから…お願いっ!!」

え、、ん、、??いやいや、待ていっ!!!俺が女の子みたいやから練習?苦手克服のための特訓??一体何をするねん???もう、頭の中“?”がいっぱいやし、ツッコミたいこともありすぎる気がしたけど、そこに他部員が体育館に入ってきたことで、練習時間が迫っているのに話し込んでいたせいで碌な準備もしてない状況に気が付き、その場では何も聞けずに終わった。練習が終わった後、例の特訓について聞こうとしたのに「ごめん!あとで連絡するから!」と用事があるとかでチャニョルはそそくさと帰ってしまって聞かれへんかった。
そして、その日の夜、チャニョルから「明日、いつもより1時間くらい早く来てもらってもいいかな…宜しくお願いします」と連絡が来た。なんか、めっちゃ不穏な空気を感じんねんけど…と思いつつ、その日はあまりに眠たすぎたので適当にスタンプ1つだけを送ってアプリを閉じた。早く起きるのはダルいけど、あの時のチャニョルめっちゃ必死な顔してたしなぁ……なんやかんやゆうてもチャニョルが困ってるんやったら助けてやりたいしなぁ……うん!そうや!俺に出来ることは何でもやろう!!俺は、重たくなった瞼に逆らえずに携帯を握りしめたまま眠りについた。
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