他メンバー
□独白
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「はい」
「助かるわ〜、課題忘れちゃってさ…悪いっ!」
休み時間、隣のクラスの奴に数学のノートを貸してくれと頼まれた。特別親しくはない奴なのだが、こういうことは割とよくあった。自分で言うのもなんだが、俺は周りから真面目で勉強の出来る奴と思われているらしい。まぁ実際、成績は悪くはない。
先程から教室のドアの前で話をしながらも、俺は自分の背後から聞こえてくる騒がしさが気になっていた。彼奴の声はよく通るなと思いながら。
ノートを借りに来た奴が自分の教室に帰っていったのでその騒がさしさの元凶を振り返って確認すると、男連中が教室の中央に集まっていた。
その中でも飛び抜けて長身の彼奴は嫌でも目立って一番に視界に入ってくる。
「おっ!ギョンス〜っ!なぁなぁ…」
屯する男達を横目に自分の席に戻ろうと歩いていると、その長身の男に呼び止められた。
男の名前は、パク・チャニョル。無口で友人も少ない俺とは対照的に、賑やかで明るく、いつも人に囲まれているような奴だ。
そういう奴は得てして他人に壁をつくらない。こんな見るからに暗い俺に対してもだ。
「ギョンス、お前この中で誰がいいっ?」
チャニョルは、その長い腕で素早く俺の肩を抱き寄せると有無を言わせず俺を男達の輪の中へと引き入れた。
嬉々としたチャニョルが顎で促す先には雑誌が広げてあり、最近テレビでよく見かけるガールズグループが大きく載っていた。
さっきから騒いでいたのは理由はこれだったのか…高校生になっても男というのはいつまでもガキである。
正直、誰がいいかと言われても皆同じに見えたが、適当に1番手前に写っている子を指差して答えた。
「この子かな」
「ソラちゃんかっ!やっぱり男の理想だよなっ!ソラちゃんはっ!!」
俺が適当に指差したその子は、チャニョルに言わせると男の理想らしい。
何がそんなに楽しいのか、ただでさえ大きい目を更に大きく開き爛々と輝かせチャニョルは話し続けた。
「俺も好きだわ〜っ!ソラちゃん!俺達、気が合うなっ!!」
気が合うか…
俺は、こちらを覗き込むようにして満面の笑みを向けてくるチャニョルを一瞥してから、もう一度、開かれたページに目を落とし“男の理想”であるらしい彼女の笑顔を見つめた。
「そうだな…」
チャニョル、
俺、本当はソラちゃんのこと好きじゃないんだ。
彼女達の中の誰も好きじゃないよ。
好きになんてなれないんだよ。
だって俺は今、
肩を抱き寄せられて密着してる体、
そこから直に伝わる体温、
優しく鼓膜を揺らす低い声、
吸い込まれてしまいそうなその大きな瞳……
彼女達の笑顔よりも、
お前の笑顔に
苦しいくらい
ときめいているんだから。
「……チャニョル、そろそろ解放しろよ。授業始まるだろ」
「あぁ、悪い!悪い!ギョンスまたな〜!」
俺が好きなのはお前だよ、チャニョラ。