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□jealousy—最強の恋人—
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夜、インターホンが鳴った。
モニターを見ると、見知らぬ男の顔があった。

「あの、夜分遅くに申し訳ありません。ギョンスくんを送ってきた者なんですが……彼、だいぶ酔っ払ってしまって……」

今夜、同棲相手であるギョンスは、仕事のプロジェクトの成功を祝って会社の人間と飲みに行くと言って出掛けて行った。時計を見るともうすぐ深夜1時になろうとしていた。

「そうですか。それはご迷惑をお掛けしてしまいました」

自分でも驚くほど抑揚のない低い声が出た。とても迷惑を掛けた相手に取る態度ではなかったが、男は、凭れかかってくるギョンスを支えるのに必死で気に留めていないように見えた。
ベッキョンはすぐに解錠ボタンを押した。

ものの数秒で玄関のチャイムが鳴る。
ドアを開けると、男に挨拶される。
ベッキョンはそれに会釈を返し、滑らかに送らせてしまったことへの謝罪の言葉を口にした。背の高い、モデルのような男だった。神経の全てが、ギョンスがその男にしどけなく寄りかかっていることに向かう。
ギョンスを男から強引に引き剥がしてしまいたい気持ちに駆られたが、わずかな理性で男がギョンスの腕を取りこちらに預けるのを大人しく待った。
「ギョンス、またな」と男が、項垂れたままのギョンスを覗き込んで、気安く別れの言葉を口にする。すると、まるで男から離れるのが嫌だと言うように、ギョンスはくるりと体を反転させ男の胸に倒れ込んだ。男はギョンスの体を支えるために抱きしめるような格好になる。男は慌てていたが、少し嬉しそうに頬を赤らめた。
一瞬で、血が沸騰したように頭が熱くなった。
クールに見えて、スキンシップが多いギョンスの、男との普段の関係性が見えたような気がした。男はギョンスの先輩だと言う。きっと目一杯、甘えた態度で先輩に接しているのだろう。男から同性だろうと『可愛い』と思われてしまうくらいに。
わずかに残っていた理性の糸は簡単に焼き切れた。
「ありがとうございました」と、ベッキョンは口だけで礼を言い、ギョンスを男から引き剥がすと、名残惜しいような目でギョンスを見送る男の視線を、厚い扉で遮った。
ぐったりと重たい恋人の腰を抱いて部屋に運ぶ。凭れかかってくる体から、酒の匂いに混じって先ほどの男の匂いがする。
ベッキョンはリビングに入ると、ギョンスの体をほとんど放り投げるようにソファーに横たえた。
酒で淡く朱色に染まった恋人の顔を睨みつける。
物騒な視線に気がついたのか、長いまつ毛をふせ目をつむっていたギョンスが、口元だけで笑った。

「ベッキョナ」

「なんだよ」

「喉渇いた、水」

ベッキョンは動かずに、じっとギョンスを見た。
動く気配のない恋人に、今度は目を開け、ベッキョンを瞳で捕らえてギョンスが一語一語、区切るように言う。

「水、ちょうだい」

薄く開いた唇から覗く赤い舌から目を逸らし、ベッキョンは軽く舌打ちして、大股で冷蔵庫に向かう。ペットボトルのミネラルウォーターを手に取り、黙ってギョンスの腹に軽く落とした。
踵を返したところで、指先を掴まれる。

「飲ませてよ」

ベッキョンはゆっくり振り返って恋人を見た。
ギョンスは不遜な笑みを浮かべていた。指先を指の腹で弄ばれる。
ベッキョンはわかっていた。酒に強いギョンスが酔い潰れるはずがないことを。

「この野郎……」

「ねぇ、早くしてよ」

ギョンスのぽってりと厚い唇がゆっくり動く。ベッキョンはギョンスの腹の上に置いたペットボトルから水を口に流し込むと、そのまま床に投げつけた。余裕の恋人に覆いかぶさって、早急に唇を奪う。
ほんの少量の水は、すぐにギョンスの中へ消えた。潤いが与えられた口中へ舌をねじ込み、音が出るほど掻きまわす。ギョンス絡みつく舌はいつもより熱かった。
酔い潰れたフリをするタチの悪い恋人が癪で、それでもまんまと嫉妬して、罰のつもりで、———何度も何度も唇にむしゃぶりつく。

「あっ……ん」

唇の隙間から漏れた艶かしい声に、興奮を煽られる。ベッキョンはギョンスの下着の中へ手をすべり込ませた。

「んっ…、酔ってるから、勃たないって……」

「嘘つけ。本当はそんな酔ってないだろ」

「酔ってるって……」

ベッキョンに、と耳元で囁かれる。
本当にタチが悪い……だけど、敵わない。
陳腐でキザなセリフでも、ギョンスに言われると笑えない。それくらいには、ギョンスのことが好きでたまらない。

「クソッ……」

「あっ、……ん、ンっ!」

ベッキョンは構わず、下着の中のモノを扱きはじめた。

「あんなにベタベタ触られやがって……抱きつきやがって……!」

「はっ、……あっ、ン!」

「ギョンスヤ、ギョンスヤ、ギョンスヤ……」

シャツを手で押し上げて、胸にも、腹にも、貪るように唇を落とす。
擦りあげた手の中でギョンスが漲っていく。腰がベッキョンの手の動きに合わせて、欲を追いかけて揺れる。
童顔で、出会った頃とほとんど変わらない顔が艶かしく歪んでいる。昔からずっとギョンスが好きだった。今でも。昔より、もっと。好きだ。好きだ。好きだ———。

「ギョンスは俺だけのもんだ……」

「あっ、あっ……!ベッキョナ……!ンンっ!」

ギョンスの細い腰がこまかく痙攣して、白濁を飛ばした。
ベッキョンはギョンスが出したものを、逃さないよう手で受け止めながら、恋人の唇をじっくり舐め、味わう。
股間のモノはもう痛いくらい張り詰めていた。本当は、疲れているだろうし今夜はゆっくり寝させてやろうと思っていた。でも、やめる。お仕置きのためでなく、ギョンスがたまらなく、欲しかった。
ベッキョンはギョンスの窄まりに白濁を指で塗り込み、昂って熱く脈打つモノでゆっくり押し広げる。

「ンン……っ!はぁ……ンっ!」

ここのところ連日仕事で忙しかったギョンスと繋がっていない。
隘路に全て収まっただけで、何より淫らによがるギョンスを見ているだけで、果ててしまいそうになるのを、ベッキョンは大きく息を吐いて堪えた。キスをしようと顔近づけると、ギョンスの口角が意地悪く上がり、ギョンスの方からキスされる。下唇を甘く噛まれ、惜しむようにゆっくりと吸いつきながら離れていき、視線が絡まる。ギョンスは不敵な微笑みを浮かべて言った。

「終わったら、次は俺の番ね……」

俺もベッキョンに挿れたい———うなじを引き寄せられ、耳元で低く囁く声が直接頭の中に響き渡る。———本当に、敵わない。
ギョンスにとっては罰でもなんでもない。相手は何倍もうわてだった。負けっぱなしだ。
ベッキョンは、首まで赤くなった。ギョンスの中でベッキョンの質量が増すと、ギョンスが小さく笑う。
ベッキョンはギョンスの中で、溶けてしまいそうな温もりを感じながら、ゆっくりと腰を揺らしはじめた。


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